18歳以下への10万円相当の給付を巡り、政府が地方自治体の判断で年内に全額現金で一括給付することも容認することになった。年内に5万円を現金で、2022年春に残りの5万円相当をクーポンで支給することを想定していたが、事務負担の重さなどを懸念する自治体から批判が相次ぎ、方針転換した。20年春には新型コロナウイルスの影響で減収した世帯に30万円を支給する案をいったん決定しながら、公明党の強い意向で一律10万円の給付に転換した経緯がある。様々な事情が絡む現金給付策の難しさが改めて浮き彫りになった。

 「丁寧に地方の声を聞き、国会の議論をしっかりと受け止め、柔軟な制度設計に努めた結果として選択肢を色々用意させていただいたということだ」

 岸田文雄首相は12月13日、同日の衆院予算委員会で18歳以下への10万円相当の給付について地方自治体が年内に現金一括で支給するのも選択肢だと表明した後、記者団にこう強調した。

岸田文雄首相は18歳以下への10万円相当の給付について、年内に現金一括で支給することを容認した(写真:つのだよしお/アフロ)
岸田文雄首相は18歳以下への10万円相当の給付について、年内に現金一括で支給することを容認した(写真:つのだよしお/アフロ)

「地方の声を聞き選択肢を用意」

 18歳以下への10万円相当の給付は、11月19日に閣議決定した経済対策の柱に位置づけられている。

 自民党と公明党の協議を踏まえ、児童手当の仕組みを活用して年収960万円の所得制限を設けたうえで、年内に自治体が現金5万円の支給を開始。さらに来年春の卒業・入学シーズンに合わせて子育て関連の商品やサービスに使途を限定した5万円分のクーポンを配ることが基本だとしていた。

 「困窮者や子育て支援対策として迅速に支給したい。同時に給付ができるだけ貯蓄に回るのを避け、消費喚起につなげたい。この二兎(にと)を追うための制度設計だった」。首相周辺はこう語る。

 一方で、経済対策には「地方自治体の実情に応じて現金給付も可能とする」とも明記した。これは、クーポンを使うことができる商業施設が少ない過疎地など一部の自治体を想定したものだった。

 だが、各地の自治体からは「クーポンによる支給は事務負担が重すぎ、時間と経費もかかる」などとして、全額現金での給付を認めるべきだとの意見が相次いだ。現金給付に比べて事務費が大幅に増えることへの世論の批判も高まっていた。

 12月13日からの衆院予算委員会で野党各党がこの問題について岸田首相を追及するのは必至だった。このため、首相は周辺と協議し、早めに軌道修正を図ることが必要と判断。政府は自治体側が柔軟に仕組みを選べるように検討を急ピッチで進めた。

 政府はまず年内に予備費を活用して5万円の現金給付を始め、5万円相当のクーポンは2021年度補正予算の成立を前提に22年春に配る計画だった。山際大志郎経済財政・再生相は21年度補正予算案の成立前に自治体が現金で一括給付した場合の対応について、政府が「事後に自治体に補助金を交付する」として、自治体の円滑な対応を後押しする考えを示した。

次ページ 給付の3方式を提示