衆院選を経て財政支出が過去最大となる経済対策をまとめた岸田文雄政権。新型コロナウイルス「第6波」対策も決定し、スピード重視で政策対応を進めている。「首相官邸主導」と評された安倍晋三政権と菅義偉政権での政策決定システムから自民党の関与を増やす方式への転換を唱える岸田首相。官邸と自民党、政府内の政策調整の仕組みはどう変わっていくのか。

 「経済の再生を行い、そして財政についても考えていく。これが順番だ」。岸田文雄首相は11月19日の日本経済新聞社などとのインタビューで、同日決定した経済対策についてこう述べ、当面は新型コロナウイルスの影響で傷んだ経済の立て直しを優先する考えを鮮明にした。

経済対策、財政支出は「過去最大」

 政府が決定した今回の経済対策は地方負担分や財政投融資を加えた財政支出が55兆7000億円となり、過去最大だった2020年4月の経済対策(48兆4000億円)を上回った。さらに民間資金を含めた事業規模は78兆9000億円で、経済対策としては過去2番目の規模に膨らんだ。

 新型コロナ対策費のほか、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の起動に向けた成長投資や分配策、防災や国土強靱(きょうじん)化の推進といった幅広い分野の政策を盛り込んだ結果、総額が拡大した。

 分配策の目玉として18歳以下の子どもに1人10万円相当を給付するほか、低所得の住民税非課税世帯にも10万円を支給する。また、新型コロナで減収に陥った事業者に最大250万円の支援金を給付する。経済安全保障の強化に向けて国内での半導体生産を補助するほか、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」の再開なども盛り込んだ。

11月19日の経済財政諮問会議であいさつする岸田文雄首相(写真:共同通信)
11月19日の経済財政諮問会議であいさつする岸田文雄首相(写真:共同通信)

 今回の大規模経済対策を巡っては、11月10~11日の日経新聞の世論調査で、18歳以下への10万円相当給付については消費喚起策として「適切ではない」との回答が67%に達するなど、給付策の効果への疑問や従来型の総花的な内容への批判が出ている。 

 ただ、そもそも首相自身が衆院選で数十兆円規模の経済対策を取りまとめると宣言した経緯があり、衆院選の勝利を経て政権内では歳出拡大論が急速に勢いを増したのが実情だ。

 「岸田首相とその周辺、そして自民党幹部も来年夏の参院選勝利が最重要課題。そのために国民が実感できる成果を迅速に示すことが何より優先する課題だと肌で感じた」(財務省幹部)

 18歳以下への10万円相当給付を巡っては、最終的に首相と公明党の山口那津男代表との協議で年収960万円の所得制限を設ける形で合意したものの、自民内になお「バラマキ批判」を懸念する声がくすぶっている。首相周辺は「参院選を考えると、10万円支給を衆院選の公約に掲げた公明党の顔を立てないわけにはいかない。所得制限を設けて何とか格好はつけた」と漏らす。

 もっとも、10万円給付問題で世論からの批判を懸念する一方、自民党内では経済対策規模の積み上げを求める声が支配的だった。党の対策作りを担う高市早苗政調会長や、来夏の参院選を指揮する茂木敏充幹事長、世耕弘成参院幹事長らは「地方の負担分や財政投融資を除く真水で30兆円超」と、規模を明示しながら財務省幹部らに対策の上積みを要求した。

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