衆院選を経て第2次岸田文雄内閣が発足した。岸田首相は経済対策の柱となる18歳以下への10万円相当の給付を巡る公明党との協議を早期に決着。看護師や介護士、保育士などの賃上げに向けた検討も急ぐ。来年夏の参院選を見据え、「目に見える成果」を積み上げて実行力をアピールしたい考えだ。一方、看板政策実現に向けた政府の政策会議が乱立気味になるなど懸念材料も出始めており、首相のかじ取りが問われる。

 「自民党総裁選、そして組閣、総選挙と最大限のスピードで駆け抜けてきた。これからは、このスピード感を政策実行にそのまま発揮すべく全力を挙げていく」。岸田文雄首相は第2次岸田内閣の発足を受けた11月10日の記者会見でこう強調した。

(写真:代表撮影/Abaca/アフロ)
(写真:代表撮影/Abaca/アフロ)

次の照準は「来夏の参院選」

 就任から間もない先の衆院選で勝利を飾り、政権の本格始動にこぎ着けた岸田首相。次の照準と強く意識するのが来年夏の参院選だ。

 ここで勝利を収めれば長期政権が見えてくるが、敗北して衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」に陥れば、政権が行き詰まりかねないためだ。首相周辺は「今後のこの政権は年内に予算措置などをどれだけ実行できるかに掛かっている」と語る。

 まずは新型コロナウイルス感染の「第6波」への備えだ。首相は10日の会見で、今年夏に比べ3割多い約3万5000人が入院できる医療体制を11月末までに整備する考えを表明した。

 年内の実用化を目指している飲み薬に関しては、米製薬大手メルクが日本政府と160万回分の契約で合意したと発表したことを踏まえ、首相は「薬事承認がされれば速やかに60万回分を医療現場に提供する」と語った。

 感染拡大時に無症状者でも無料でPCR検査を受けることを可能とする方針も示した。政府はこうした内容を盛り込んだコロナ対策の全体像を12日に発表し、感染拡大への対策を急ぐ考えだ。

 経済対策の取りまとめへ向けた作業も加速している。柱となる18歳以下の子どもへの10万円相当の給付を巡り、岸田首相が10日、公明党の山口那津男代表と会談して合意した。

 新型コロナの影響を受けた人たちへの支援策を巡り、公明党は衆院選の公約として高校3年生以下の子どもへの10万円相当の支給を「未来応援給付」と位置づけ、所得制限を設けずに実施する案を掲げた。これに対し自民党は子育て世帯や非正規雇用者など困窮者への経済的支援を盛り込んだが、金額は明示していなかった。

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