政府・与党が防衛力の抜本的な強化に向けた検討を本格化させている。政府の有識者会議に続き、10月18日には自民・公明両党の協議が始まった。相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有のあり方や、防衛費増額の規模と財源の確保策などが焦点となる。財源を巡っては、財務省は法人税などの増税分を充てる案を有力な選択肢とみているが、経済産業省や経済界は反発を強めており、先行きは不透明だ。

2022年3月、静岡県の東富士演習場で離島防衛の訓練を行う陸上自衛隊員(写真=共同通信)
2022年3月、静岡県の東富士演習場で離島防衛の訓練を行う陸上自衛隊員(写真=共同通信)

 防衛力の抜本的な強化に向け、政府は9月末に「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」を立ち上げ、検討を始めている。政府からは岸田文雄首相や林芳正外相、浜田靖一防衛相、鈴木俊一財務相が加わっている。有識者会議は12月上旬をメドに提言をまとめ、12月中旬にも決定する国家安全保障戦略などの防衛関連3文書に反映する。

「反撃能力」や増額の規模・財源が焦点

 政府内の検討と並行して10月18日には自民・公明両党の協議も始まった。自民党の麻生太郎副総裁、公明党の北側一雄副代表をトップとし、自民党の小野寺五典安全保障調査会長、公明党の佐藤茂樹外交安保調査会長が取り仕切るワーキングチームで実質的な議論を進める。

 政府は与党の議論も踏まえて3文書を改訂し、内容に沿って年末までに2023年度予算案を決める段取りを描いている。

 政府の有識者会議、与党協議ともに相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有のあり方や、サイバー防衛の強化、防衛費増額の規模と財源の確保策などが焦点となる。

 反撃能力に関し、協議会のメンバーである自民党の茂木敏充幹事長は18日の記者会見で、「先制攻撃にならない反撃のタイミングや、反撃の対象をどこにするかが大きな焦点になる」と指摘した。      

 公明党は反撃能力の必要性は認める一方、抑制的な行使を求めている。専守防衛との関係や反撃の対象、発動の要件などが議論のポイントになりそうだ。

 防衛費の増額を巡っては、自民党は防衛費を5年以内にGDP(国内総生産)比で2%以上の水準に増やす目標を掲げている。日本の22年度当初予算の防衛費は約5兆4000億円で、GDP比では1%弱だ。2%を目標にするなら、現在からほぼ倍増させる必要がある。それを5年以内に達成する場合、毎年1兆円超を増やさなければならない。 

 首相官邸や財務省、公明党は規模ありきの議論に否定的だ。公明の山口那津男代表は「中身を積み上げていかなければならない」と主張する。政府の有識者会議や財務省は防衛省以外が所管するインフラ整備費や科学技術研究費といった各府省庁の関連予算をまとめて「国防関係予算」とする案を検討している。

 財務省幹部は「米国のように、国家安全保障の観点から巨額の国防予算を最先端の技術研究に投じ、さらに軍事研究の成果が民間の経済成長を促す仕組みなどを日本でも導入できないか、検討している」と語る。 

 一方、防衛費の増額を防衛省以外の予算も含めて議論すべきだとの考え方については、自民党内や防衛省などから「防衛費の純増につながらなければ意味がない」「国際情勢が緊迫しているというのに、歳出増を抑えたい財務省の言いなりになるのはおかしい」といった反発の声も上がっている。

 防衛費拡大の中身が固まるまでに曲折も予想されるが、さらに難航しそうなのがそのための財源の手当てだ。

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