菅義偉首相は9月3日、今月行われる自民党総裁選に立候補しない考えを表明した。今月末に総裁任期が満了するのに伴い、首相を退任することになる。9月6日に予定していた党執行部人事の人選作業が行き詰まり、政権運営の継続が難しくなったと判断したとみられる。安倍晋三前首相の辞任を受け、昨年9月16日に発足した菅政権は1年余りで幕を閉じる。小泉進次郎環境相らが首相に「名誉ある撤退」を説き続けたことも総裁選出馬見送りの背景に挙げられる。

9月3日、菅義偉首相は自民党総裁選に出馬しないことを表明した(写真:AFP/アフロ)
9月3日、菅義偉首相は自民党総裁選に出馬しないことを表明した(写真:AFP/アフロ)

 「今月17日から自民党の総裁選挙が始まる。私自身、出馬を予定する中でコロナ対策と選挙活動を考えたときに莫大なエネルギーが必要だ。そういう中でやはり両立はできず、どちらかに選択すべきだ」「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため私は専念したいと判断した。国民の命と暮らしを守る首相として私の責務なので、専念してやり遂げたい」

 菅義偉首相は9月3日、自民党役員会で9月17日告示、29日投開票の党総裁選への出馬を見送る意向を表明。その後、首相官邸で記者団にその理由についてこう説明した。

止まらない首相の求心力低下

 菅首相の総裁任期は9月30日までで、衆院議員の任期満了は10月21日に迫っている。東京都議選で自民党が苦戦したのに続き、8月22日投開票の横浜市長選で菅首相が支援した元国家公安委員長の小此木八郎氏が惨敗。新型コロナウイルス対応への不満などから支持率低迷にあえぐ首相の求心力はさらに低下していた。

 目前に迫る総裁選は「選挙の顔」を選ぶ機会となる。首相や政府への強い批判を背景に、次期衆院選に不安がある中堅・若手議員らから「菅首相の下では戦えない」「衆院選で与党の過半数割れもあり得る」といった懸念の声が噴出していた。

 このため、首相は局面転換を図ろうと、後ろ盾だった二階俊博幹事長など党執行部の刷新を打ち出した。知名度の高い石破茂元幹事長らを起用して立て直しを図り、総裁選や衆院選に臨む考えだった。

 だが、首相が人事刷新後の9月中旬に衆院解散に踏み切るとの観測が広がると、党内では「首相の延命のための解散は許されない」といった反発が広がった。

 首相の総裁選再選を支持する安倍晋三前首相や麻生太郎副総理兼財務相も「党内の反発を抑えることはできない」などと解散に反対する意向を伝達。起死回生を狙った首相の解散カードは事実上封印された。

 異例となる総裁選前の党執行部人事についても、党内からは「個利個略」などと反発が出ていた。総裁選で、首相は党員・党友票だけでなく国会議員票についても十分な得票が見込めないとの見方が広がり、あるベテラン議員は「総裁選で敗北するか、その先の衆院選で大きく議席を減らす可能性がある中、幹事長などを引き受ける人はいないだろう」と指摘していた。首相周辺によると、党執行部人事の調整は難航していたようだ。

 実は、ここ数日の間、水面下では首相に近い議員や閣僚らがこうした党内の厳しい情勢を首相に伝え、総裁選出馬の見送りを促す動きが相次いでいた。

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