岸田文雄首相が8月10日、内閣改造・自民党役員人事を行った。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題や物価高対応などを巡り政権への批判が強まる中、人事刷新で立て直しを図る。政権の安定のため麻生太郎自民党副総裁や茂木敏充幹事長、松野博一官房長官ら骨格を留任させ、閣僚には経験者を多く登用した。自民党役員には非主流派も起用し、挙党態勢の構築をアピールした。党役員の中でキーマンとなるのが萩生田光一政調会長だ。首相がとりわけ萩生田氏を重視する真意とは。

 岸田文雄首相が8月5日、10日に内閣改造・自民党役員人事を行う意向を党幹部らに示すと、自民党内や霞が関の各省庁幹部から「想定外だ」といった驚きの声が相次いだ。

 それまで人事は8月下旬から9月上旬頃に行うとの見方が広がっており、急きょ夏休みを中止した官僚や自民党職員も少なくない。

 岸田首相は6日、党内の想定より早い人事について「もともと、できるだけ早く体制をスタートさせなければならないと考え続けてきた。その考え通り、今のタイミングで行うことにした」と説明した。

役員会後、記者会見する自民党の萩生田政調会長。左は茂木幹事長、右は遠藤総務会長(写真:共同通信)
役員会後、記者会見する自民党の萩生田政調会長。左は茂木幹事長、右は遠藤総務会長(写真:共同通信)

 人事に踏み切る理由としては、新型コロナウイルス対策に加え、ウクライナ情勢や台湾情勢への対応、物価高対策、防衛力強化、さらに9月末の安倍晋三元首相の国葬の準備などを挙げた。

 さらに、9日の記者会見では、このタイミングで人事に踏み切る理由について「戦後最大級の難局突破のために政府・与党の結束がこれまで以上に重要だ」と強調した。

離れ出した高齢者層の支持

 7月の参院選で勝利し、政権基盤を固めたかにみえた首相だったが、ここにきて、報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率が軒並み下落している。

 共同通信社が7月30、31両日に実施した全国電話世論調査によると、支持率は51.0%で7月11、12両日の前回調査から12.2ポイント急落した。
NHKが8月5~7日に実施した全国世論調査でも、支持率は参院選直後の調査より13ポイント下がって46%。不支持率は7ポイント上がって28%となった。読売新聞が8月5~7日に実施した調査でも、支持率は前回から8ポイント下落し57%となり、不支持率は32%と8ポイント上昇した。

 いずれの調査でも、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題や安倍晋三元首相の国葬、政府の新型コロナウイルス対策や物価高への対応への不満などが支持率低下の要因とみられる。

 「旧統一教会と自民党議員との関係に厳しい見方が注がれ、国葬や物価高への対応にも日増しに不満が高まっている。特にこれまで岸田さんを支持してきた高齢者層の支持が離れ出しているのは心配だ」。自民党のベテラン議員はこう話す。

 岸田首相としては、こうした状況を踏まえ、自民党の各派閥からの要望が強まる前に人事を行うことで主導権を確保するとともに、人事の刷新で局面の打開を図る狙いが透ける。

 首相の危機感を背景に、閣僚・自民党役員人事は共に党内の結束を重視する布陣となった。

 閣僚については、要となる松野博一官房長官、林芳正外相や鈴木俊一財務相、斉藤鉄夫国土交通相、山際大志郎経済財政・再生相を留任させた。これ以外のポストを入れ替えたが、安定感や経験を踏まえ閣僚経験者を多く登用した。

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