各省庁が2023年度予算を要求する際の概算要求基準が決まり、予算編成作業が本格化する。歳出総額の上限は10年連続設けず、防衛費や脱炭素推進、少子化対策など要求額に上限を設定しない「事項要求」を認めるテーマが相次ぐ。年末の決着に向け、効果の高い施策への絞り込みや国民負担を伴う財源論議の行方が焦点となる。政権内では来春の統一地方選などへの影響を考慮し、防衛費増額の仕組みづくりを優先してほかの主要政策の財源論議は来年以降に先送りするとの落としどころも語られ出している。

 今回の概算要求基準では、岸田文雄首相肝いりの「新しい資本主義」関連など重要政策向けに、4兆4000億円規模の特別枠を設けた。年金・医療など社会保障費は5600億円の自然増を見込む。各省庁からの要求は8月末に締め切る。

7月27日、「GX実行会議」の初会合であいさつする岸田首相(手前、写真:共同通信)
7月27日、「GX実行会議」の初会合であいさつする岸田首相(手前、写真:共同通信)

 政府は6月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、防衛力の5年以内の抜本強化や脱炭素の推進、少子化対策を主要政策テーマに掲げた。

相次ぐ上限無しの「事項要求」

 これらに加え、新型コロナウイルス対策や物価高対策について要求額に上限を設定しない「事項要求」を認めることにしたのが大きな特徴だ。

 背景にあるのが、骨太の方針を巡る自民党の意見集約の難航だ。亡くなった安倍晋三元首相が中心だった積極財政派と財政再建派が対立。歳出改革努力の継続が防衛力強化などの妨げになると主張した積極財政派に配慮し、骨太の方針に「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」との文言が明記された。

 この方針が概算要求基準にも引き継がれ、事項要求を認めるテーマが相次ぐ内容となった。年末までに与党や財務省、各省庁が予算案の内容や規模、財源などを詰める予定だ。

 もっとも、岸田首相は秋以降に新たな経済対策をまとめる方針だ。政権内では23年度予算案の歳出膨張を一定程度にとどめる一方、概算要求の対象外である22年度補正予算案で各省庁の「落選要求」を手当てするシナリオが既に語られ出している。

 年末の予算編成に向けては、防衛費の抜本強化や脱炭素推進、少子化対策・子育て支援策の具体化と予算規模、それらの財源確保が焦点となる。

 防衛費に関しては、骨太の方針にNATO(北大西洋条約機構)諸国が国防予算をGDP(国内総生産)比で2%以上にするよう努力している現状に触れた。自民党は参院選の公約でGDP比2%以上を念頭に5年以内に増やす方針を掲げた。

 日本の22年度予算の防衛費は約5兆4000億円で、GDP比では1%弱だ。2%を目標にするなら、現在からほぼ倍増させる必要がある。それを5年以内に達成する場合、毎年1兆円超を増やさなければならない計算になる。

 岸田首相は防衛費を巡り、「将来にわたり我が国を守り抜く防衛力を構築すべく、様々な取り組みを積み上げていき、その上で必要となるものの裏付けとなる予算をしっかりと確保していく。その際、内容、金額、財源の3点セットで議論を行っていく」と繰り返す。要は「必要な関連予算の積み上げが基本」との立場を崩していない。

 これに対し、安倍氏は生前、23年度予算案での防衛費の扱いについて「6兆円台後半から7兆円が見えるぐらいの規模を確保すべきだ」と主張。財源については国債の発行で対応すべきだとの持論を展開していた。

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