第26回参院選が7月10日投開票され、自民党は改選124に欠員補充1を加えた125議席の過半数の63議席を単独で確保して大勝した。憲法改正に前向きな勢力は非改選議席と合わせ改憲の国会発議に必要な総定数の3分の2を維持した。立憲民主党は改選議席を下回り、日本維新の会は伸ばした。衆参両院で安定的な政権基盤を得た岸田文雄首相が先送りしてきた多くの課題にどう対応していくのか。参院選で掲げた「決断と実行」の中身が問われる。

今回の参院選の改選定数は選挙区74、比例代表50の計124で、神奈川選挙区の補充を含め125議席を争った。自民、公明の与党の獲得議席は改選69議席を上回った。
「1人区」は自民党の28勝4敗
岸田文雄首相(自民党総裁)は昨年10月の衆院選に続き、大型の国政選挙で2連勝した。投開票日2日前の7月8日に自民の安倍晋三元首相が銃撃を受けて死去し、有権者の投票行動に影響を及ぼした可能性がある。
参院選の結果を踏まえて11日に記者会見した岸田氏は「安倍元首相の思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けてこられた拉致問題や憲法改正など、ご自身の手で果たすことができなかった難題に取り組んでいく」と強調した。
自民党は勝敗のカギとなる全国で32ある改選定数1の「1人区」で前回の22議席を大幅に上回る28議席を獲得した。敗北は青森、山形、長野、沖縄の4県にとどまり、複数区は擁立した候補者全員が当選した。
過去2回の参院選で野党はすべての1人区で候補者を一本化した。今回はそれが11選挙区にとどまり、政権批判票が分散したことが響いた。野党第1党の立憲民主党は改選23議席から大きく減らし、日本維新の会は比例代表で立民を上回るなど改選議席から倍増した。
今回の選挙戦では、昨年10月に発足した岸田政権に対する評価や、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた物価高対策、防衛力強化など外交・安全保障政策が主な争点となった。
物価高対策を巡り、与党はガソリンに対する補助金などの原油高対策や、節電ポイントの創設、飼料・肥料高騰への支援策などを中心に取り組むと訴えた。これに対し野党各党は消費税率の時限的な引き下げや廃止を主張した。
ウクライナ侵攻などを踏まえた防衛力強化を巡り、自民党は防衛費をGDP(国内総生産)比2%以上を念頭に5年かけて強化していく方針を主張。野党でも維新の会や国民民主党は防衛力強化を訴えた。首相は「防衛力強化の中身、裏付けとなる予算、財源を一体で議論する」との説明に終始した。
参院選の結果を受け、首相は8月下旬にも内閣改造・自民党役員人事を行う方針だ。党内最大派閥の清和政策研究会(安倍派)を率いていた安倍氏の突然の死去を踏まえ、主要ポストをどう割り振るのかが焦点となる。
安倍派には安倍氏の後継として衆目の一致する候補者がおらず、最大派閥が不安定化する可能性がある。安倍氏という大きな後ろ盾を失う中、人事権を持つ首相の判断が注目される。
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