政府は7月8日、東京都に4度目となる新型コロナウイルスの緊急事態宣言を発令することを決めた。期間は7月12日から8月22日まで。東京五輪の開催期間すべてが宣言時期に含まれる。政府は東京について「まん延防止等重点措置」の延長にとどめる方向だったが、7月7日の新規感染者が急増したことなどから転換した。これを受け、東京五輪について、東京など1都3県ではすべての会場で観客を入れずに開催することが決まった。菅義偉首相は五輪の有観客にこだわるより世論への配慮を優先し、9月を念頭に置く衆院解散への環境整備を重視した。宣言の実効性をどう高めるのか、ワクチン接種が想定通りに進むのかなど、先行きにはいくつものハードルが待ち受ける。

7月8日、菅義偉首相は東京都に4度目となる緊急事態宣言を発令することを発表した(POOL via ZUMA Wire/共同通信イメージズ)
7月8日、菅義偉首相は東京都に4度目となる緊急事態宣言を発令することを発表した(POOL via ZUMA Wire/共同通信イメージズ)

 「ここで再度、東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならない。そうした思いで、先手、先手で予防的措置を講ずることとし、東京都に緊急事態宣言を今一度(ひとたび)、発出する判断をした」

 7月8日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部開催後の記者会見。菅義偉首相は東京に4度目となる緊急事態宣言を発令した理由についてこう語った。

再び酒類提供停止へ

 政府は7月11日まで東京など10都道府県を宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の対象としていた。東京は12日から宣言に移行する。沖縄県への宣言と埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県への重点措置はいずれも8月22日まで延長する。北海道、愛知、京都、兵庫、福岡の5道府県の重点措置は7月11日の期限で解除する。

 焦点となった飲食店の酒類提供については、宣言地域の東京、沖縄では一律停止を要請する。東京都は都内の飲食店に対し、酒類を提供する場合は休業を要請する。提供しない飲食店には20時までの営業時間短縮を求める。重点措置地域でも原則停止とし、一定の感染対策を取った店舗は知事の判断で19時まで提供を認めることになった。

 要請に協力してもらう店舗を増やすため、政府の基本的対処方針に「協力金の先渡しが可能となる仕組みの導入」を明記した。協力金の支給が遅れていることへの不満が高まっており、協力要請の実効性を高める狙いだ。

 政府はこれまで、7月11日までの重点措置について、五輪会場がある東京など首都圏の1都3県について延長する構えだった。東京の新型コロナの人口10万人あたり直近1週間の新規感染者の合計は「ステージ4(感染爆発)」の水準が続き、近隣の埼玉県などでも増加傾向が続いていた。それでも医療提供体制に余力があることから、菅首相らは重点措置で対応できると見ていた。

 東京五輪の観客受け入れを巡り、首相は宣言を発令するような事態になれば「無観客もあり得る」との考えを示していた。その一方で、「イベント基準に沿った対応を取るべきだ」と周辺に語り、重点措置の継続であれば5000人以下の会場などは有観客での開催が可能になると期待を寄せていた。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会も有観客での開催を後押ししていた。

 だが、事態は急転換する。きっかけとなったのが、7日の都内の新型コロナの新規感染者数が920人と急増したことだった。900人を超えるのは宣言が発令中だった5月13日以来で、政府・与党内に衝撃が走った。

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