全3523文字

経済産業省が二酸化炭素(CO2)を多く排出する旧式の石炭火力発電所の休廃止を促す方針を表明した。低効率型設備の9割にあたる100基程度を対象に、2030年度までに段階的に減らしていくことを想定している。地球温暖化対策を重視する姿勢を打ち出す一方、高効率の石炭火力は維持し、基幹電源としての位置づけは変えない考えだ。エネルギー政策を取り仕切る経産省の思惑とは。

 「脱炭素社会の実現を目指すために、非効率な石炭火力発電所のフェードアウトや、再生可能エネルギーの主力電源化を目指していくうえでより実効性のある新たな仕組みを導入すべく、今月中に検討を開始するよう指示した」

 梶山弘志経済産業相は7月3日の閣議後の記者会見で、二酸化炭素(CO2)を多く排出する低効率な石炭火力発電所の段階的な削減に向け具体的な検討を始めるとともに、再生可能エネルギーの導入を加速するため送電網の利用ルールを見直す方針を表明した。

 経済産業省によると、石炭火力発電所は国内に140基ある。このうち発電効率が低い旧式施設の9割にあたる100基程度が休廃止の対象となる見通しだ。

 経産省は今月中にも有識者会議を設置し、具体的な仕組みの検討を始める。電力会社ごとに低効率設備による発電量の上限を定め、2030年度にかけてこれを少しずつ下げていく方法や、早期に休廃止する場合に費用の一部を助成するなど取り組みを促す優遇措置を検討する見通しだ。年内をメドに具体策をまとめたい考えだ。

高効率の石炭火力は維持・拡大へ

 一方で、経産省は欧州各国のような石炭火力の全廃は目指さず、高効率の石炭火力は維持・拡大する方針だ。

 梶山氏は3日の会見で「日本は資源のない国であり、電源のベストミックスが重要。一つひとつの電源を放棄できない」と強調した。

 国のエネルギー政策の長期的な指針となる「エネルギー基本計画」では、石炭を「安定供給性や経済性に優れたベースロード電源」と定めている。

 30年度時点で全体の発電量に占める割合について、石炭火力を26%、液化天然ガス(LNG)を27%、原子力を20~22%、太陽光や風力などの再生エネを22~24%にする目標を掲げている。梶山氏はこの30年度の石炭火力の目標について「今の時点で変わりはない」と語った。

 もっとも、2018年度で石炭火力発電の割合は32%に上り、目標の数値を大きく上回っている。東日本大震災後に各地の原発が停止し、その後原発の再稼働が想定通りに進まず、LNG火力と石炭火力が電力供給を支えてきたためだ。

 今のままでは石炭火力の割合を目標の水準まで引き下げるのは難しい。このため、経産省はCO2を多く排出する低効率な石炭火力発電所の段階的な休止や廃止を進めることで、石炭火力の割合を26%程度まで引き下げていきたい考えだ。

 一方、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、英国やフランス、ドイツなどは環境負荷が大きいとして石炭火力を全廃する方針を打ち出している。銀行が石炭関連などCO2排出量の多い企業への融資を絞るなど世界では石炭火力への風当たりが強まっており、日本の取り組みへの批判が出ていた。

環境への負荷が大きい石炭火力発電への風当たりは強まっている(写真はオーストラリアの石炭火力発電所、写真:ロイター/アフロ)

 今回、低効率の石炭火力発電所の休廃止を進める方針を打ち出したとはいえ、引き続き石炭火力を基幹電源の1つに位置づけ、高効率の石炭火力を維持・拡大しようという日本。こうした姿勢が国際的にどう評価されるのかは不透明だが、経産省幹部は「日本には日本の事情がある。エネルギー政策を一歩ずつ前に進めていくという姿勢を示し、取り組みを着実に進めていくだけだ」と淡々と語る。

 経産省は天然資源に乏しく、エネルギー自給率が低い日本にとって石炭火力の廃止は非現実的との立場だ。石炭火力は燃料が比較的安価。電力料金の高騰を抑えられ、産業界もこれを歓迎してきた経緯がある。離島など石炭火力に頼らざるを得ない地域や、天候によって発電量が左右されがちな再生エネのバックアップ機能として必要といった事情もある。

 それでは、なぜこのタイミングで経産省は旧式の石炭火力発電所の休廃止促進を打ち出したのか。背景には幾つかの事情がある。