新型コロナウイルス対策の切り札と位置づけるワクチン接種が加速し、手応えを感じる菅義偉首相。9日の党首討論では希望するすべての人への接種を10~11月に終えると表明した。11日から英国で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)で東京五輪・パラリンピック開催への支持を取り付け、6月中にも観客の扱いを決める方針だ。ワクチン接種の進展を見込んだ五輪後の「衆院9月解散」への流れが強まったが、死角はないのか。

(写真:つのだよしお/アフロ)
(写真:つのだよしお/アフロ)

 2年ぶりの開催となった6月9日の党首討論。政府の新型コロナウイルス対策や東京五輪・パラリンピックへの対応が焦点となったが、菅義偉首相が主導権を握るために注力したのがワクチン接種進展のアピールだった。

 立憲民主党の枝野幸男代表との討論では「まさにワクチン接種が切り札だ」とした上で、「全国の自治体や医療関係者の努力で順調に進んでいる。重症化しやすい高齢者は7月中に接種を完了する」と強調した。

 さらに「6月21日からは職場や大学で産業医を中心に集団接種が始まる。少なくとも6月末には4000万回は超えることができる」との見通しを表明。「10月から11月にかけては必要な国民、希望する方、すべてを終えることを実現したい」と新たな目標も掲げた。

ワクチン接種「10~11月完了」

 野党党首と1対1形式で論戦を交わす党首討論に菅首相が臨んだのは初めて。自民党内では当意即妙のやり取りが得意でない首相を不安視する向きもあったが、首相が防戦に追われる場面はほとんどなかった。

 もっとも、首相はワクチン接種加速への戦略を語る一方、五輪・パラリンピックの開催を巡っては、来日する関係者の縮小や行動管理の徹底など従来の国会答弁を繰り返すだけだった。

 共産党の志位和夫委員長は「五輪は中止すべきだ」との立場から「そうまでして開催しなければならない理由は何か」と詰め寄った。だが、首相は「国民の命と安全を守るのが私の責務だ。守れなくなったらやらないのは当然のことだ」などと述べるにとどまった。

 討論は全体で45分。野党各党の持ち時間が限られていることもあり、全般的に低調なやり取りが続いた。「首相が討論に応じたのは、ワクチン接種の加速という最大の防御材料を手にしたから。討論に注目していた方々は不満だろうが、枝野さんの得点にもなっておらず、無難にしのいだだけで十分だ」と首相周辺は漏らす。

 淡々と討論をこなした首相は11日から英南西部コーンウォールで開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席する。サミットではコロナ対策や中国問題、世界経済などが主要議題となり、個別会談も予定されている。とりわけ首相が自らの重要ミッションと位置づけているのが東京五輪・パラリンピック開催への支持の取り付けだ。

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