「高齢者向け7月末まで終了」が増加
こうした状況下で、菅首相が局面転換の切り札として注力しているのがワクチン接種の拡大だ。4月23日に7月末までに希望する65歳以上の高齢者への接種完了を目指すという目標を打ち上げた首相は、自衛隊の投入や総務省に自治体による円滑な接種の支援を命じるなど、なりふり構わぬ姿勢で環境整備を急がせている。

5月24日から東京と大阪で自衛隊の医師らによる「大規模接種センター」でのワクチン接種が始まった。都道府県や政令市でも大規模接種会場を設ける動きが広がってきた。
さらに、政府が5月21日に公表した調査によると、65歳以上の高齢者への新型コロナウイルスのワクチン接種が「7月末までに終了する」と答えたのは全国1741市区町村のうち1616で92.8%となった。5月12日時点の調査では85.6%だった。
この回答には医療従事者の確保を前提とする計画も含まれており、依然、円滑なワクチン接種には課題が山積している。政権内では「7月末までの完了は努力目標で自治体を焦らせる必要はない」(自民党閣僚経験者)との指摘も出ている。とはいえ、首相の強い意向を受け、政府側が各自治体に働きかけを強めるなどした結果、ワクチンの「打ち手」の確保などに各自治体が本腰を入れ出したことは間違いない。
「選挙の環境は後になるほど整う。今はワクチン接種に全力だ。何としてもやり遂げる」
周辺にこう語る首相が思い描く今後の政権運営・衆院解散シナリオは絞られつつある。衆院議員の任期は10月21日まで。ワクチン接種の進展に伴い新規感染者数や重症化する人を減少させ、支持率を回復。五輪・パラリンピックを無事通過し、9月末に自民党総裁の任期が切れる前に衆院を解散。勝利に導き、その後の総裁選で再選を果たすというものだ。
自らの派閥を持たない首相は党内基盤が盤石とは言えない。衆院選前に総裁選を実施すれば「別の選挙の顔を選ぶべきだ」と「菅降ろし」を誘発する恐れがある。首相に近い自民議員は「衆院選に勝利してから総裁選に臨めば、ほぼ無風で勝利だ」とみる。
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