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新型コロナウイルスの感染拡大で休校が長期化する中、学校の入学や始業を9月にする「9月入学」を巡る議論が本格化してきた。学習の遅れを少なくし、海外で主流の秋入学に足並みをそろえるメリットがある一方、多くの課題が指摘される。政府・与党は2021年以降の導入もにらみ慎重に議論を進める構えだ。当面の対応として今の学年を今年6月から実質11カ月とし、来年の入学時期を5月に1カ月遅らせる案も浮上している。

 「9月入学も有力な選択肢の1つだろう。前広に検討していきたい。もちろん拙速な議論は避けなければいけない。しっかりと深く議論をしていきたい」

 14日の記者会見。安倍晋三首相は学校の入学や始業時期を9月にずらす「9月入学」について、検討を進める考えを重ねて示した。

 欧米や中国など海外では秋入学が主流だ。実は日本でも明治時代に9月入学の時期があった。国の会計年度を4月からに切り替えたことなどから、大正時代にかけて4月入学に移行した。

有志知事17人が政府に検討を求める声明

 かつて行われていた9月入学への移行は政府などが過去に何度も検討してきた。欧米諸国などに足並みをそろえ、留学生や研究者らの行き来を増やそうという「教育の国際化」を求める声が高まったことが主な理由だ。だが、そのたびに実現しなかった経緯がある。

 中曽根康弘内閣の1987年、当時の臨時教育審議会は秋季入学について「大きな意義が認められ移行すべきだ」としながらも、「意義と必要性が国民一般に受け入れられているとはいえない」と先送りを提言。その後議論は立ち消えとなった。

 第1次安倍政権時代の2007年には教育再生会議が9月入学の促進を提言した。また東京大学は11年に秋入学導入を本格的に検討。だが、高校卒業後に空白期間が生まれることなどを理由に学内外から強い反発を受け、断念した。

 浮かんでは消え、を繰り返してきた9月入学構想。それが今、再び注目を集めているのは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い臨時休校が長引き、予定される年間の学習内容をこなせない恐れや再開時期の違いによる学力格差の拡大を懸念する見方が強まっているためだ。

 留学の増加や外国人材の採用などを活発化させ、長年の課題だった人材の国際化につなげようという狙いもある。

 先に声を上げたのは地方自治体の首長だ。4月末に有志知事17人が政府に検討を求める声明を出し、その後全国知事会が緊急提言を発表。発信力のある東京都の小池百合子知事は「教育システム、社会システムを変えるきっかけにすべきだ」と訴え、大阪府の吉村洋文知事も「9月入学はグローバルスタンダードだ」と強調し、世間の耳目を集めた。

萩生田光一文部科学相(写真)は移行には課題があるとの考えを示しているが……(写真:つのだよしお/アフロ)

 こうした流れを受け、政府、与野党が9月入学導入の利点と課題、社会的影響などについて議論を進めている。

 政府・与党のこれまでの議論では、今年9月の開始見送りは既に固まっている。十分な準備期間が必要なうえ財源の確保など課題が山積しており、短期間のうちに切り替えれば、教育現場をはじめ社会全般に混乱が生じる恐れがあるためだ。

 自民党は21年以降の導入をにらんでクリアすべき課題を整理。現状から大きく制度を変えない場合の対応策も含む幾つかの選択肢を今月末にもまとめ、政府に提言する方針だ。その後、政府で具体的な検討を進める見通しだ。

 文部科学省などは21年9月の入学とする場合、今の学年を5カ月間延長し、17カ月とする案などを検討している。進級や卒業を5カ月遅らせることで学習の遅れを取り戻しやすくなるためだ。高校や大学などの入試日程を後ろにずらせば受験生の準備期間を確保できる。留学や外国人材採用など国際化対応に追い風になることもメリットに挙げられている。