政府は東京、大阪などに出していた新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、期限の延長と愛知、福岡両県の対象追加を決めた。幅広い業種への休業要請など短期間の強い対策は「人流抑制」に一定の効果はあったが、感染力の高い変異ウイルスの拡大で感染状況が好転しなかった。政府の打つ手が限られる中、菅義偉首相はワクチン接種を局面打開の切り札と位置付け注力する構え。ワクチン接種のスピードが政権の先行きを左右しそうだ。

 「人流の減少という所期の目的は達成できたと考えている」「しかしながら、新規感染者数は東京、大阪共に(国の感染指標で最も深刻な)ステージ4を大きく超える水準にあり、愛知や福岡においてもステージ4を超えている」

 5月7日、政府の対策本部で東京、大阪、京都、兵庫に発令中の緊急事態宣言を5月31日まで延長し、愛知、福岡両県を対象に追加することを決めた後の記者会見。菅義偉首相は今回の宣言の効果や、延長と対象地域拡大の理由についてこう語った。

 宣言に準じた対策をとる「まん延防止等重点措置」も5月31日まで延長し、地域を拡大した。既に重点措置を適用している埼玉、千葉、神奈川、愛媛、沖縄の5県に9日から北海道と岐阜、三重の3道県を追加した。宮城県は12日から外す。

人出は減っても好転しない感染状況

 3度目となる宣言は4月25日から5月11日まで大型連休を挟んだ17日間の予定だった。「人流の抑制」を重視する観点から、酒類を出す飲食店や大型商業施設に休業を要請し、スポーツなどのイベントの無観客開催にも踏み込む強い措置で、首相は「短期間で集中して実施する」と説明していた。

 こうした措置で繁華街などの人出はある程度減ったものの、感染状況は好転せず、宣言の延長や対象地域の拡大に追い込まれた。

 政府は宣言の延長に伴い感染防止策を変更した。酒類とカラオケを提供する飲食店への休業要請を続け、酒類の店内持ち込みも禁じるなど飲食時の対策中心に戻すのが柱だ。

 一方、休業を要請している百貨店やショッピングセンターなど延べ床面積が1000平方メートル超の大型商業施設は午後8時まで時短営業を認めることにした。スポーツやコンサートなどの大規模イベントの入場制限も緩和する。無観客の方針を変更し、5000人か定員の50%のいずれか少ない方を上限に入場を認める。

 「もともと首相は今回の宣言で百貨店や球場などイベント施設の制限措置に消極的だった。百貨店や球場が感染拡大につながっている明確な証拠がなかったためだ。だが、大阪府の吉村洋文知事が『人流を抑える必要がある』と強い措置を政府に求めたことで先手を打たれてしまった。『そんな必要はない』と言える確信もなく、厳しい対策を打つしかなかったというのが実情だ」。首相周辺はこう漏らす。

 しかも、これ以上の経営への打撃を避けたい多くの業界幹部や主要企業経営者からの批判や制限緩和を求める声は強まっていた。日本百貨店協会が6日に5月12日以降の営業再開を認めるよう求める要望書を政府に提出するなど、首相や自民党幹部、政府関係者への働きかけは激化。中には秋までに行われる衆院選での支援見直しを示唆する声まで寄せられたという。もともとの持論に加え、今後の政権運営や衆院選などへの影響を考慮した首相は関係閣僚らと協議し、制限の緩和へ転じた。

続きを読む 2/4 東京、大阪「上乗せ措置」の背景

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