原油や物価の高騰を受けた緊急対策の財源を巡り、自民党と公明党の綱引きが続いている。岸田文雄首相や自民党執行部が2022年度予算の予備費を活用したうえで補正予算案は今夏の参院選後に編成する段取りを想定しているのに対し、公明党は財源不足への警戒を理由に今国会で補正予算を成立させるよう主張している。両党幹部間のパイプが細くなる中、公明は支持母体の強い意向を受けており、先行きは不透明だ。

岸田首相(右)と公明党の山口代表(写真:共同通信)
岸田首相(右)と公明党の山口代表(写真:共同通信)

 原油高や物価高による影響が広がっていることを踏まえ、岸田文雄首相は3月末、緊急対策を4月末までに策定するよう関係閣僚へ指示した。(1)原油高対策(2)食料・資源高対策(3)中小企業支援(4)生活困窮者支援──が柱となる。

 過去最大となる2022年度予算が3月22日に成立したばかりだが、今夏の参院選を控え、物価高による消費者や企業への影響を軽減するのが狙いだ。

自民は「予備費で迅速対応」

 政府・自民党執行部は財源として22年度予算の新型コロナウイルス対策の5兆円を含む総額5兆5000億円の予備費を充てる考えだ。自民党の茂木敏充幹事長は「すぐに使える予備費を活用し、迅速かつ機動的に対応していく」と語る。

 自民党は議論を進めており、11日にはガソリンなどの小売価格を抑えるための政府による石油元売りへの補助金を5月以降も継続するとともに、補助額の上限である25円を超える支援を検討するよう求める提言案をまとめた。ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除については政府・与党内で見送るべきだとの見方が強まっている。

 提言案には生活困窮者への支援金給付なども明記した。世耕弘成参院幹事長は8日の記者会見で、困窮世帯への10万円給付を提案している。

 一方、自民党は参院選の公約作りにも着手した。岸田首相(党統裁)の看板政策である「新しい資本主義」の具体策などを盛り込み、6月までに取りまとめる予定だ。

 岸田首相や自民幹部はまず予備費を活用する緊急対策を決めた後に、公約を反映した大規模な経済対策をまとめ、参院選後にその裏付けとなる22年度補正予算案を編成する2段階の対応を想定している。

 本来、大規模災害など不測の事態に備えて計上する予備費を物価対策に充てることに批判も出ているが、首相や自民党には参院選前の補正予算案編成が参院選に不利に働くのではないかとの懸念が根強い。

 補正予算案審議のために予算委員会を開けば野党の攻勢を受けかねない。さらに野党が政府案より注目を集めるような具体策やより大規模な予算措置を打ち出す可能性があるほか、参院選前に補正予算が成立すれば自民党を支持する業界団体の動きが緩むといった事態を警戒しているためだ。

 これに対し、公明党幹部は補正予算案を編成して今国会で成立させるべきだとの主張を繰り返している。山口那津男代表はこれまでの記者会見で「急激な国際情勢の変化、物価高、新型コロナウイルス対応も視野に入れ、補正成立を図るべきだ」と重ねて主張。今国会の閉幕直後の参院選で「政治空白」が生じる可能性を指摘し、「対応を誤れば政治の責任になりかねない」と指摘する。

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