菅義偉政権の発足から半年が経過した。当初は7割を超えた内閣支持率は新型コロナウイルスの新規感染者数と連動して急落したが、最近は回復しつつある。総務省幹部接待問題など懸案が続出する中でも2021年度予算案審議は順調。首相はワクチン接種の進展や4月前半に予定するバイデン米大統領との首脳会談などをテコに政権浮揚を図る構えだ。「菅流」政権運営の現状と思い描く衆院解散戦略とは。

(写真:つのだよしお/アフロ)

 「9月に就任してから毎日全力投球で取り組んできた。あっという間の半年だった。そういう中で、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止め、安心できる日常を一日も早く取り戻せるよう最優先で取り組んできた」「私自身が就任に際して約束した政策、例えば携帯電話料金は値下げに向けて競争が始まっている」

 政権発足から半年を迎えた3月16日、菅義偉首相は記者団にこの間の政権運営や成果についてこう強調した。

 昨年9月の政権発足後、滑り出しは上々だった。安倍晋三前政権の路線継承を掲げつつ「国民のために働く内閣を作る」と宣言した菅首相。雪深い秋田県の農家出身というたたき上げ政治家としての顔と、携帯電話料金の引き下げや農林水産物の輸出拡大など肝いりの政策を推進する改革派の2つの顔を併せ持つ首相は世論の期待を集め、発足直後の日本経済新聞社の世論調査で内閣支持率は歴代3番目に高い74%に達した。

歴代3位の支持率で船出も……

 「国民目線で国民がおかしいと思うことをやっていけば評価される」。こうした持論を持つ菅首相は首相就任直後から携帯電話料金の引き下げなど「菅案件」と称される具体的政策の推進に注力した。

 昨年9月末以降、大手携帯会社が携帯料金の引き下げプランを相次いで発表。2021年のデジタル庁創設にめどを付け、50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を打ち出した。政権として「グリーン」と「デジタル」を成長戦略の柱に据える方針を示し、国内外から評価の声があがった。

 だが、昨年末にかけて新型コロナの感染が再拡大すると支持率は急落。12月の日経調査で支持率は42%になり、3カ月で実に32ポイントも低下した。観光需要喚起策「Go To トラベル」の全国一斉停止の判断が遅れるなど感染対策が「後手に回った」との批判の高まりが主な要因だ。

 今年は9月に自民党総裁選、10月に衆院議員の任期満了を控える。自民党内では支持率急落の最中、新型コロナへの首相の対応や発信力不足への不満が広がり、「首相に選挙の顔の役割は期待できない」と「ポスト菅」論議が頻繁に行われる状況だった。

 批判の矛先は「菅流」の政権運営や意思決定システムにも向けられた。7年8カ月に及ぶ長期政権となった安倍前政権の首相官邸では安倍氏が主に外交・安全保障分野を担当し、経済産業省出身で安倍氏の最側近だった今井尚哉前首相補佐官兼首相秘書官氏らと政権の主要テーマやスローガンを決定。官房長官の菅氏が主に内政の個別課題を手掛けるなどバランスを取りながら役割分担し、広範な政策や課題を立案・調整していた。

 さらに、要所では安倍氏に対し今井氏や菅氏が直言し、政権内での「嫌われ役」になることもいとわなかった。今井氏の出身母体である経産省も様々な形で政権を下支えした。こうした体制で様々な物事を前さばきし、危機管理も徹底することが「安倍1強」と称された政権運営の要諦だった。

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