ロシアのウクライナ侵攻という暴挙に対し、日米欧は経済制裁を強め、企業がロシアでの事業から手を引く動きも広がってきた。そうした中、日本はサイバー攻撃やエネルギー価格の高騰など安全保障上の課題に直面し、迅速な対応と戦略の見直しを迫られている。

(写真:AFP/アフロ)
(写真:AFP/アフロ)

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、日本は米欧と足並みをそろえてロシアへの経済制裁を強めている。

 主要7カ国(G7)は国際決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの銀行の排除やロシア中央銀行への制裁で協調。さらに、プーチン大統領ら政権幹部の資産を凍結する個人制裁も決めた。「プーチン氏は侵略者」との印象を強調する狙いがある。

「ロシアとの関係はこれまで通りにはならない」

 岸田文雄首相は3月2日の参院予算委員会で、一連の経済制裁について「国際社会はロシアとの関係をこれまで通りにしていくことはもはやできない。経済制裁を通じG7をはじめとする国際社会との連携を重視しながら、断固とした行動を示していく姿勢が重要だ」と強調した。

 日本の対応について米国のバイデン政権は高く評価している。米ホワイトハウスのサキ大統領報道官は2月27日、日本の制裁措置を「歓迎する」との声明を発表。「岸田文雄首相と日本政府はプーチン氏のウクライナ攻撃を非難するリーダーだ。今後も緊密に連携し、さらなる厳しい代償を科し、プーチン氏の選択した戦争を戦略的失敗にするよう取り組んでいく」と記した。

 バイデン大統領からも2月28日付で、岸田首相に対応への謝意を伝える書簡が届いた。

 政府内で慎重な意見もある中、最終的に岸田首相が判断し、迅速に強い制裁へとかじを切った。首相周辺は背景をこう語る。

 「消極的な立場だったドイツやスウェーデンなどが世論に押される形でウクライナへの武器供与やロシアに対する追加制裁を行うことに方針転換したことが1点。そしてロシアの力による現状変更を許せば中国が台湾海峡などで威圧的な動きを強める恐れがあるだけに、今は米欧と連携してロシアの野望をくじく必要があると首相が判断した」

 一方で、経済制裁の強化で資源価格がさらに高騰するなど、世界経済や日本も無傷ではいられなくなっている。岸田首相も「国民や日本企業の関係者にも影響が及ぶことは避けられない」と語る。

 日本の安全保障を揺るがす事態として表面化したのが、トヨタ自動車が主要取引先へのサイバー攻撃を受け、国内全工場の操業停止に追い込まれた事案だ。現時点で誰が攻撃者かは不明だが、ロシア側の報復措置を念頭に、政府が全国の企業や金融機関にサイバー攻撃への対応強化を求めている最中に発生した。

 これを受け、内閣サイバーセキュリティセンターは、経済産業省や警察庁、国土交通省などと連名で、国内の企業や団体などに対し、中小企業や取引先などサプライチェーン全体をふかんし、適切な安全対策を実施するよう改めて注意を呼びかけた。

次ページ サイバー攻撃対応、安保戦略の柱に