東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が女性を蔑視した発言で国内外から強い批判を招き、辞任を表明した。さらに森氏が密室で後任を指名しようとした手法に疑問の声が続出し、混乱に拍車をかけた。森氏の発言や後任を巡る対応に世論の厳しいまなざしが向けられ、旧来型の政治手法に逆風が吹きつけている。政府の新型コロナウイルス対応への低評価が続く現状も含め、この国の政治リーダーに求められる要件がさらに厳しくなったことを物語る。

 「今日をもって会長を辞任する。五輪の開催準備に私がいることが妨げになってはいけない。女性を蔑視するとかそういう気持ちは持っていない。解釈の仕方だと思う」

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は2月12日の評議員や理事らによる臨時の合同懇談会で、時折悔しさをにじませながら辞任の弁を語った。

 森氏は3日、日本オリンピック委員会(JOC)の会合で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言し批判を招いた。翌日の記者会見で謝罪し発言を撤回、続投の意向を示していた。

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

IOCとスポンサーがダメ出し

 だが、いったんは「森会長は謝罪した。この問題は既に決着した」と表明していた国際オリンピック委員会(IOC)が9日に一転して森氏の発言について「完全に不適切だ」と厳しい見解を公表。さらにスポンサー企業から批判が相次いだことを踏まえ、辞任に追い込まれることになった。

 混乱に拍車をかけたのが、森氏主導による後任選びの動きだった。本来なら理事会での審議や承認などの正式な手続きが必要なのに、森氏は菅義偉首相や安倍晋三前首相らキーマンに根回し済みだとして、信頼を寄せる川淵三郎・元日本サッカー協会会長に就任を打診。川淵氏はいったん受諾したが、不透明な「後継指名」の経緯に批判が強まり、12日に辞退する展開となった。

 政府関係者によると、事実上川淵氏の就任阻止に動いたのは菅首相だった。

 それまで五輪の成功には国内外の調整役として「余人をもって代えがたい」存在だった森氏の続投が望ましいとみていた首相は「人事は独立した法人として組織委で決める。私は判断を尊重する立場だ」と述べるなど、森氏の進退問題とは一線を画していた。

 だが、不透明な形で後継人事が固まれば国内外からの批判が一段と高まりかねない。それが政権への不満につながるリスクを懸念した首相は森氏の「後継指名」情報を把握した後、周辺を通じ、組織委幹部に対し後任はルールに基づき透明性を確保して選ぶべきであり、女性が望ましいといった意向を伝達。様々なルートで状況を察した川淵氏には辞退する以外の選択肢は残されていなかった。

 振り出しに戻った後任人事について、組織委は新設する「候補者検討委員会」で候補を選定し、今週にも理事会を開いて新しい会長を決められるよう準備を急いでいる。候補者として橋本聖子五輪相らを推す声が出ている。

 聖火リレーのスタートが3月25日に迫り、3月下旬をめどに国内外からの観客をどの程度受け入れるかなどの方針も決める見通しだ。IOC、政府、自治体などとの調整が必要なため、組織委は早期に新たな体制を整えたい考えだ。

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