国会論戦が本格化する中、菅義偉首相が防戦に追われている。新型コロナウイルス対応への強い不満が支持離れを招き、求心力低下は深刻だ。政府は2月2日に緊急事態宣言の延長を決める見通しで、逆風が収まる気配はない。首相は2月下旬からの開始を目指す新型コロナのワクチン接種を現状打開の切り札と位置づけているが、政権内では「ワクチンへの期待頼み」の構図を不安視する声が少なくない。

(写真:つのだよしお/アフロ)

 「この状況は謙虚に受け止めたい。総じて新型コロナウイルス対策への批判が多い。感染拡大を防ぐための対応策に国民の理解をいただけていないことが大きい」

 1月26日の衆院予算委員会。立憲民主党議員が報道各社の世論調査で内閣不支持率が支持率を逆転する状況が相次いだ理由を尋ねたのに対し、菅義偉首相は神妙な表情でこう語った。

支持率の「貯金」を失った首相

 原則毎年1月に召集される通常国会は時の政権にとって「鬼門」とされる。

 特にテレビ中継される中、一問一答形式で丁々発止のやり取りとなる予算委では首相や閣僚の答弁力が試される。さらに、重要法案の課題あぶり出しやスキャンダル追及の場となることなどから、その後内閣支持率が下がるケースが多いためだ。

 こうしたことから、安倍晋三前首相は「通常国会召集前や予算成立後に外交日程を入れ、得意の外交面で支持率の上積みや回復を図るようにしていた」と振り返る。年末から新年へと年が変わることによる「リセット効果」が見られるのも常だった。

 これに対し、現在の菅首相が直面する状況はかなり厳しい。

 まず、通常国会召集前に支持率急落に見舞われ、支持率の「貯金」を吐き出してしまったことが1点。昨年末に新型コロナの感染拡大が続き、リセット効果が事実上吹き飛んでしまったことも大きい。さらに、新型コロナの影響で当面は対面による外交成果のアピールが望みにくく、事実上、コロナ対応を中心とする内政問題に集中せざるを得ないためだ。

 「1月28日に首相と米国のバイデン大統領が電話協議を行ったことで、訪米しての直接会談は遠くなった。2月中どころか3月も難しいかもしれない」。政府関係者はこう指摘する。

 足元では自民党の松本純氏、公明党の遠山清彦氏がそれぞれ、緊急事態宣言中に東京・銀座の飲食店を訪れていた問題が発覚し、世論から猛反発を受けた。首相を筆頭に野党への対応を巡り低姿勢に徹したことで、新型コロナ対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算の成立と、新型コロナに対応する関連法案の与野党による修正合意にこぎ着けたものの、政権への逆風が弱まる兆しは見られない。

 その一端を示すのが日本経済新聞社とテレビ東京が1月29~31日に実施した世論調査だ。菅内閣の支持率は43%で昨年12月の前回調査の42%からほぼ横ばいだったが、政府のコロナ対策を「評価しない」は61%で、同じ質問を実施した昨年2月以降で最も高かった。さらに、内閣を「支持しない」と答えた不支持率は50%と2ポイント上昇し、菅内閣が発足した20年9月以降、初めて50%台を記録した。

 「携帯電話料金の引き下げや気候変動対策などの政策面で成果を積み上げ、政権基盤を固めていくシナリオが完全に狂った。今は立民の低支持率に助けられているが、この政権への評価はコロナ対応次第という状況はきつい」。首相に近い自民党議員は嘆き節だ。

 1日には「銀座会合」が問題となった公明の遠山氏が議員辞職に追い込まれ、さらに自民の松本氏ら3議員が責任を取って離党届を提出する事態となった。政府・与党にはさらなる打撃だ。

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