伝統的企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)として脚光を浴びた米ゼネラル・エレクトリック(GE)。その総責任者を務めていたビル・ルー氏が、2019年からオーストラリアで新たな挑戦をしている。建設・不動産という伝統的な業界でDXを進めるために必要なこととは何か。

 「世界で最も優れた企業であるGEの仕事で学んだのは、戦略にはデジタルが含まれていなければならないということだ」

 GEのデジタル化推進の立役者だったビル・ルー氏はこう語る。GEは2015年にサービスやソフトウエアで本業のDXを推進するGEデジタルを米シリコンバレーに設立。最高経営責任者(CEO)としてDXを率いてきたのが米シスコシステムズ出身のルー氏だった。

<span class="fontBold">ビル・ルー氏</span>。2019年から豪レンドリースのデジタル部門のCEOを務める。GEのDX推進の中心人物だった
ビル・ルー氏。2019年から豪レンドリースのデジタル部門のCEOを務める。GEのDX推進の中心人物だった

 ルー氏は18年末までにGEデジタルを退社し、19年初頭からオーストラリアのレンドリースに参加した。同社は投資部門を持つ不動産・建設業だという。オーストラリアだけでなく、日本や米国など世界各地に拠点を持ち、オフィスや住宅、社会インフラなどの開発を手がけている。

 ルー氏はGE退社の直接の理由については明言を避けつつも、「GEでは多くの変化を経験してきた。財務や(GE本体の)CEO(が経営不振で1年で交代するなど)の変化もあった。GEで製造革命や産業の変化を議論してきたが、これと同じことが不動産や建設の分野でも起きている。この産業分野が近代化の最初の段階にあると考え、新たな挑戦をするチャンスと思い参加することにした」と説明する。

建設業を「デジタルツイン」で近代化

 「一等地を利用し、開発・建設し、近代化することを得意としているユニークな業態だ。ここにデジタルの能力を加えるのが私の役目だ。最終的にはデジタルツインの技術を活用し、すべてデジタルで管理できるようにする」

 ルー氏はレンドリースのビジネスモデルとDXの狙いをこう語る。GEから一貫して取り組んでいるのが「デジタルツイン」技術の活用だ。実際の建物や管区用のデジタルコピーを「双子」のようにコンピューター上で再現。挙動や性能、景観をあらかじめシミュレーションし、確かめることができる。ルー氏は「設計プロセスからフルデジタルで自動化することで、高度な建物の建設に必要なコストを大幅に削減できる。自動車や航空宇宙ではすでに実現しているもので、我々の業界にとって真の魔法の技術になる」と自信を見せる。

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