──その意味で今現在はどういうフェーズですか?

中村氏:今は選択と集中が進んでいる段階と言えます。全体の投資金額は20年に19年を超え、その一方で件数は19年を下回って18年と同じ水準でした。つまり1件当たりの金額が大きくなっているのです。20年は人と会わずにズームなどで投資を決めたのが9割を超えたと言われています。ただ、その投資先の起業家にコロナ禍の前に会っていたり、もしくは1人か2人、信頼できる人を介したりしていることが大半です。

 現在、旅行や広告などの業界はコロナ禍の影響を受けています。しかし、よく見てみると、全部が大きなダメージを受けているわけではありません。我々の投資先に旅行業界向けのマーケティングサービスのスタートアップがあります。一時期はビジネスが80%ぐらい減りましたが、急速に回復して今は2割減ぐらいで、利益率が上がっています。競合が減ったのもありますが、そのスタートアップはホテル側から支持されているのです。

 当初はホテル側から「支払いを猶予してください」という話もありましたが、「あなたのサービスだけは残します」と言われるのです。そうして2番手、3番手のサービスを解約するのですが、そうすると経営の状況が悪くなった2番手や3番手の企業からエースの営業パーソンが移ってきます。一緒にお客さんも連れてくるので、1番手とそれ以外の差がどんどん開きます。

 VC側にも顕著に表れています。シカゴ大学の私の恩師が、ハーバード大学やスタンフォード大学とVCの投資動向やパフォーマンスを調べています。彼が指摘したのが、現在いい成績を出しているかどうかでトップ25%のVCかどうかが分かるということでした。今ポートフォリオが痛んでいるところは下位50%です。企業投資家もパフォーマンスの悪いファンドを解約して、成績のいいところに乗り換え始めています。

物流やクリーンテックに注目

今後、注目の業界や企業はありますか。

中村氏:まずはロジスティックスです。デジタル化が難しかったのですが、技術的に解消できる兆しが出てきています。AI(人工知能)などを活用して、物流を効率化するプラットフォームを提供する会社が今後2~3年で多く出てくると思います。そしてそこから勝ち組になるところが出てきます。

中村氏は「物流業界のデジタル化が新たな段階に入った」と語る
中村氏は「物流業界のデジタル化が新たな段階に入った」と語る

 いわば15年ごろのフィンテックのようなものです。いろんなデータを統合したり、トータルで管理したりすることで、伝統的な業界が変わっていく。物流の領域にパランティアのような会社が出てくるイメージです。コンセプトはいいけどPoC(概念実証)でとどまっていたような案件が一気にブレークスルーして実用化される可能性が出てきています。製造の分野でもあると思っています。

 環境配慮のクリーンテックではこれまでハードウエア的な部分が注目されていました。これがソフトウエア中心にシフトするのではないかとも見ています。金融やフィンテックを環境と組み合わせたソリューションが出てくるのではないでしょうか。例えば、二酸化炭素の排出量が少ないビルに入居しているとして、それを自社の管理会計にどう反映させるのかといったことが必要ですね。

 メディカルの分野でも新たな動きがあるのではないでしょうか。例えば、メンタルヘルスに課題がある人がいたとして、企業内での仕事のアサインを最適化したり、他の人との相性を考慮して配置したりすることで、従来とは違ったパフォーマンスが得られる可能性があります。こうしたことを可能にする、センサーやデータ分析技術が出てきています。

今、Sozoが投資家から集めているファンドの運用はどのような状況ですか?

中村氏:現在は3号ファンドとして約5億ドル(約540億円)を募集中です。1号や2号はそれぞれ約2億ドルでした。3号は手続き中のものもありますが、3.5億~4億ドルぐらいまで既存の投資家の出資で埋まっている状況です。非常にいい成績を残しており、既に数倍はお返ししています。そうした既存の投資家が再投資しています。新規は1~1.5億ドル程度と思うのですが、新規の投資家にはまず小さな金額で入っていただき、関係を構築していきたいと思っています。

Sozoは有力な既存のネットワークに入っていくパターンが多いと理解しました。ただ今後、Sozoが中核となっていくこともあるのでしょうか。

中村氏:あると思います。1つが医療や福祉の分野ではないかと思っていす。日本は少子高齢化かつ国民皆保険という世界から見ると特殊な社会です。今後、こうした課題を解決する日本のスタートアップが世界に出て行くこともあるのではないでしょうか。そうしたものをサポートしていきたいと思っています。

 グローバル化によって米国市場の役割がこれまで以上に強まっていくと思っています。この最大市場でデファクトや新しいビジネスモデルが生まれていきます。日米の「時間差」をなくしたいと思っています。日本の企業が同じようなタイミングで関与していくような取り組みができないかと考えています。

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