
「サンフランシスコ国際空港のライドシェアの待機場で2時間たっても順番が回ってこない。早ければ5分程度で15分待つこともないんだけどね」
米カリフォルニア州のシリコンバレーとサンフランシスコを合わせた「ベイエリア」で、シェアリングサービスのリフトの運転手として生計を立てている吉元逸郎氏は、諦め顔で語る。「売り上げは普段の2割以下だね。日がたつごとにほぼゼロに近づいている。これでは本当に暮らしていけない」
ベイエリアでは2020年3月17日0時、新型コロナウイルスの拡散を防ぐため、不要不急の外出をせずに自宅に待機する命令が下された。食料品を購入するためにスーパーに行くことや、他人と6フィート(約183cm)の距離を保って散歩やランニングをすることは許される。その一方で、飲食店やレジャー施設などの通常営業は禁止された。
サンフランシスコの店は閉まり、パロアルトではスタンフォード大学も閉鎖した。街中での人の移動は極端に細っている。旅行や出張もなくなった。冒頭のようにライドシェアで稼ぐ運転手には大打撃となっている。
同様に大きな影響を受けているのが外食業界だ。ベイエリアでは高額な家賃に加えて、人件費の負担も重い。多くの飲食店では従業員をいったん解雇するなどして急場をしのいでいる。
影響は数字に表れている。米労働省が3月26日に発表した失業保険の申請者は21日までの1週間で328万にも上った。これはその前の週の10倍以上で、リーマン・ショック後で最多だった09年3月の66万件をはるかに上回る。
途方もない数の人が職を失った。米サンフランシスコ市やシリコンバレーの街中では身なりのいい路上生活者も見かけるようになった。そう、失職して間もないのだ。
こうした中、サンフランシスコで働いていた日本人の中でも解雇されたり、営んでいた店をたたんで帰国したりする動きも出てきている。2月ごろから自粛モードになっていたところに、知事や大統領の在宅要請が出て一気に経済が冷え込んだのだ。
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