米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は2021年2月2日、突如退任を発表した。クラウドサービスの米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEOであるアンディ・ジャシー氏を後任に指名した。ベゾス氏は今後何を担い、クラウドに続く「アマゾン3.0」はどこに向かうのか、関係者への取材から分析する。

 「驚くべき発明は数年後には当たり前になる。業績を見るときは発明の長期的な累積の結果を見ているが、今アマゾンはこれまでになく独創的だ。移行に最適な時期だと考えた」

 アマゾンのベゾスCEOは2020年1~12月期の通期決算の公表と同時に、CEOの交代を発表し声明を出した。取締役会にとどまり、エグゼクティブチェア(取締役執行会長)の肩書となる。実際に体制を移行するのは、21年の第3四半期(7~9月)だ。

公の場にはほとんど出なくなったベゾス氏。写真は2012年の記者会見(David McNew / Getty Images)

 ベゾス氏は事業の最前線から身を引く一方で、重要な戦略の決定、対外的な慈善活動、環境問題などに注力していくと見られる。決算発表の会見でブライアン・オルサブスキーCFO(最高財務責任者)は「ジェフ(ベゾス氏)はより重要な決定事項、例えば買収や戦略、食料品店への進出など、多くの大きな問題に関与することになるだろう」と説明した。

 また、ベゾス氏は米テスラのイーロン・マスクCEOと同様に宇宙に強い関心を持っており、宇宙事業スタートアップの米ブルーオリジンを設立している。同日社員に宛てたレターで「アマゾンのCEOは重責で、ほかに関心を向けられない」としており、ブルーオリジンにも注力していくだろう。

2020年が移行の準備だった

 突然の退任発表だが、振り返ると数年間をかけて綿密に練られたプランであることも分かる。

 アマゾンはベゾスCEOの傘下に消費者ビジネスを統括する「ワールドワイドコンシューマーCEO」、法人向けビジネスの「AWS CEO」の2人を置く。この体制にしたのは今から5年前。両ポストでベゾス氏の後継を競わせるものと見られてきた。そうした中、20年夏にもう1人のCEO後継候補とされたワールドワイドコンシューマーCEO(当時)のジェフ・ウィルク氏が21年の初めに退職すると公表したことから、事実上ジャシー氏がベゾス氏の後継になった。

 また、米メディアのCNBCはジャシー氏の後継として、AWS セールス&マーケティング担当のバイスプレジデント(VP)、マット・ガーマン氏の名を挙げている。AWS関係者は「上級VPを通り越す形になるが、技術系の彼に最近セールスを担当させたので、CEO候補という可能性もあるだろう。記事で候補と挙げられている他の2人は技術系にとどまっている」と説明する。

 AWSにおける動きを含め、20年を体制変更の年としたことが分かる。アマゾンに勤務経験のある関係者は「ここ最近、ジェフが経営会議に出てこないという噂を聞いていた」と言う。普段メディアの前に姿を現さないベゾス氏だが、19年9月にワシントン州シアトルの本社で行った記者発表の後のパーティーではジーンズにジャケットの姿で突然現れ、ドリンクを片手に参加者と談笑した。既にこの時点で次期体制を決めていたかもしれない。

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