米株式市場で個人投資家、そしてSNSの影響が見過ごせなくなっている。コロナ禍で台頭したこの2つの勢力によって、株式のプロであるウォール街のヘッジファンドが多額の損失を被った。一方、今回の混乱によって、株式の民主化をうたった米ロビンフッド・ファイナンシャルが本当に弱者の味方なのかという議論が巻き起こっている。

シリコンバレーの中心地、メンローパーク市にあるフィンテックスタートアップのロビンフッド・ファイナンシャルの本社前。小雨が降る中、若い男女が抗議のプラカードを持って集まった。
彼ら彼女らの怒りの矛先は株式の売買アプリを提供するロビンフッドと、金融界を牛耳る伝統的なウォール街だ。抗議に参加したシリコンバレーに住む看護師の女性は「株式取引の自由市場をシャットダウンしたのは許せない」と憤りを隠さない。
ロビンフッドの利用者は「ロビンフッダー」と呼ばれ、手数料無料のため頻繁に売買を繰り返すこともあるという。SNSのような使いやすいインターフェースで、1株未満で取引できるのも人気の理由だ。利用者は1000万人以上となり、8割が若者世代とされている。

事の発端は2021年1月中旬から同27日まで株価が急騰していた、ビデオゲーム小売り大手の米ゲームストップの株式取引だ。物言う株主であるライアン・コーエン氏が同社の取締役に就任したのをきっかけに17~19ドルで低迷していた株価が上昇に転じた。そして26日火曜日から27日水曜日の2日間で株価は4倍以上に暴騰した。
一方、28日木曜日にロビンフッドなどはゲームストップ株の取引を中断。株価はさらに上昇して一時は460ドルとなったが、前日から45%安い193ドルまで下落した。29日金曜日に取引が制限付きで再開されると、再度上昇に転じて325ドルで取引が終了した。
この28日木曜日の取引停止でロビンフッドのユーザーはゲームストップの株式を取引できなくなり、投資の機会を失った。中には損害を被った投資家もいただろう。
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