新型コロナウイルス感染拡大を受けて、私たちの働き方は大きく変わった。リモートワークが一気に広がり、週5日の出勤は自明のものではなくなった。働き方の変化を受けて、オフィスの在り方はどう変わるのか。コロナ前には空室がほとんどなかった東京のオフィス市場の先行きはどうなるのか。東京から地方への企業移転は起きるのか。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)で日本法人社長を務める河西利信氏に話を聞いた。

<span class="fontBold">河西利信(かさい・としのぶ)</span><br>1985年大和証券入社。99年ゴールドマン・サックス証券へ。2004年同社パートナーに。12年より現職。一橋大学商学部卒業。米国ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院修士課程修了。(写真:伊藤菜々子)
河西利信(かさい・としのぶ)
1985年大和証券入社。99年ゴールドマン・サックス証券へ。2004年同社パートナーに。12年より現職。一橋大学商学部卒業。米国ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院修士課程修了。(写真:伊藤菜々子)

新型コロナウイルス感染拡大の当初には過激なオフィス不要論もささやかれましたが、最近はオフィスをめぐる議論も落ち着いたように思います。

JLL日本法人の河西利信社長:感染拡大当初の緊急避難的な対応から、第1波が落ち着いたあたりからの「リエントリー(再参入)」、つまりは一度クローズダウンしたオフィスにどうやって社員を戻していったらいいのだろうか。どういう安全対策を取ったらいいのだろうか。机の間隔はどうすべきだろうか、出入り口や動線はどうすべきだろうかと。こうしたリエントリーの段階を経て、今はさらに各国で、中長期的にオフィスというものをどう再定義していくのかというフェーズに移りつつあります。われわれは現在の状況を「リイマジン(再創造)」と呼んでいます。

コロナでオフィスの在り方はどう変わりますか。

河西氏:従来のオフィスは集約方向でした。マザーオフィス、本社と呼び換えてもいいですが、ここに集約することによって、コミュニケーションが円滑になり、コラボレーションや創造性が生ずるので、できるだけ集めましょうと。これはオフィス効率の観点からも有効であると考えられていました。1カ所に集めれば面積も、今まで別々だったら1000必要だったものが850で済むかもしれない。

 これがコロナで変わりました。一点集約型からネットワーク型へともいわれますが、それぞれの通勤などのことも考えて、マザーオフィス以外にサテライトオフィスも設けようというのがトレンドです。在宅勤務の浸透で社員の自宅もオフィスの一部と考えるようになりました。さらに踏み込んで、ワーケーションのような考え方も出てきています。これらを総合的に考えるのがメジャーになりつつあります。

総合的に考えると、オフィスの新しい在り方はどんなイメージになるのでしょうか。

河西氏:基本コンセプトはABW、アクティビティー・ベースド・ワーキングになると思います。つまり、業務内容であるとか、自宅の環境であるとか、その日の都合であるとか、そういうアクティビティーの状況によって、在宅であったり、サテライトオフィスであったり、マザーオフィスであったりということを柔軟に選べるような働き方であり、オフィスの構え方です。

いずれはすべて元通りになる。原則出社で、従来の集約型オフィスでいいと考える経営者もいます。働き方とオフィスの在り方の多様化は不可逆的だと考えていますか。

河西氏:われわれの顧客は、大手企業が中心ですが、ヒアリングをしたところ、アジア全体では68%が現状で在宅勤務を採用しています。これはすごい数字です。こうした企業をベースに考えた場合には、やはり変化は不可逆的なのかなという印象を持っています。一難去れば、やはり従来型でいいと、みんなで集まってわいわいやろうよという方向に戻るというのは考えにくい。

 ただ、在宅勤務をしている方にコロナ後にはオフィス勤務に戻りたいですかと質問をしたところ、61%が戻りたいと答えてもいます。在宅は浸透していますが、やはりオフィスがいいねという見直しが進む面はもちろんある。

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