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新型コロナウイルス対策の財源を捻出するため、東京都が2019年度決算ベースで9345億円あった財政調整基金を、これまでに8400億円ほど取り崩している。多くの大企業が本社を置く東京は、他の道府県に比べて税収全体に法人関係税収が占める割合が高い。景気の波の影響を受けやすいことから、これまで税収不足に備えて都は多額の財政調整基金を積み立ててきたが、一連の取り崩しで残額は900億円あまりにまで減った。コロナ禍による景気への悪影響が懸念される中、今後の財政運営は厳しさを増している。財政学が専門で、東京都税制調査会の会長も務める立教大学の池上岳彦教授に話を聞いた。

池上岳彦(いけがみ・たけひこ)氏
1959年宮城県生まれ。東北大学法学部卒業。同大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。99年から立教大学経済学部教授。2010~13年政府の税制調査会専門家委員会委員、15年から東京都税制調査会会長を務める。専攻は財政学、地方財政論。『地方財政を学ぶ』(共著、有斐閣、2017年)など著書多数。(写真:北山宏一)

東京都は新型コロナウイルス対策に伴う支出のため、税収の変動に備えて積み立てておく財政調整基金を大幅に取り崩しました。

池上岳彦・立教大学教授(以下、池上氏):今回、財政調整基金を取り崩したことで目立ってしまいましたが、逆に言えば、危機に対応する必要度が東京都は大きいということだと思います。もちろんほかの都市圏でも、そういう対応は必要ですが、実際のところ東京は政治経済の中心地であって、東京の安全が損なわれるようなことがあれば、日本全体が動かなくなってしまう。

 都の場合、景気のいいときには法人関係の税収が特に伸びるのは確かにその通りで、基金を積むことができる。しかし、それはいざというときに備えているのです。

 今回、使い方が無駄だったというのなら話は別ですが、例えば飲食店に感染拡大防止の協力金を配ったことについて、無駄だと言っている人はあまり多くない。やはり必要な使い方をしているのだと思います。

それでも規模の大きな取り崩しを不安に思う都民は多いのではないでしょうか。

池上氏:9000億円ぐらいあった財政調整基金を、大きく1000億円を切るところまで取り崩したわけですが、内訳を見ると一番大きな要因は中小企業に対する制度融資です。民間の金融機関が中小企業に融資するよう、東京都が金融機関にお金を預ける。この預託金に5000億円くらいを充てている。別にお金を消費してしまったわけではありません。預けてあるだけで、別に消えてなくなったわけではない。

 じゃあ、その預託金はいったいどうなってしまうのかというと、これはまさに危機が終わってみなければ分かりません。中小企業がちゃんと融資を返済すれば、預託金は金融機関から返ってきます。都のバランスシートを見ると、確かに財政調整基金は大幅に減りましたが、預託金という資産はある。お金がなくなってしまったというのは、ちょっと表面的な見方だと思っています。

 感染拡大防止の協力金は確かに目立ちましたが、実は何千億円も配ったというわけではありません。確かにほかの道府県と比べれば規模は大きいですが、東京都の財政を揺るがすほどではありません。

本当に苦しい人にだけお金を配るのは難しい

国の持続化給付金に上乗せする形での協力金の給付について、「やりすぎだ」という指摘もあります。