国民1人当たりに10万円を支給する「特別定額給付金」のオンライン申請をめぐり、申請の受付や支払いを担う市区町村の現場が混乱している。誤入力や重複申請などの不備が相次ぎ、照合作業や確認に追われる職員からは悲鳴が上がる。オンライン申請の受け付けを中止し、郵送申請に絞る自治体も現れた。

オンライン申請中止の皮切りとなったのは高松市。5月25日に取りやめ、郵送申請に一本化する。高知市や東京都八王子市なども追随している。 当初はオンライン申請に必要なマイナンバーカードの普及が進んでいないことが、速やかな給付の妨げになるとも予想されたが、蓋を開けてみれば、カードがむしろ足かせになるような事態になっている。
どうしてこんなことになったのか。
二重申請どころか15回も重複申請
「そもそも今回の給付金に、マイナンバーカードがそぐわない」――。こう指摘するのは、ある県庁所在市の担当者だ。これまでに約6000件のオンライン申請が寄せられているが、振込先の口座番号の欄に氏名が記入されていたり、金融機関名が空欄だったりといった不備が2割近くで見つかった。また、二重申請どころか15回も重複申請しているケースもあるという。
今回のオンライン申請は原則として、世帯主が家族分も申請する仕組みだ。しかし、マイナンバーカードには世帯主の情報しか記録されていない。そのため、世帯から抜けた子どもの氏名が誤って記入されているといったミスが多発。役所側で住民基本台帳と突き合わせる必要が生じ、作業が大幅に遅れている。
この市では、大型連休中に職員がほとんど徹夜で作業して、住民基本台帳の情報を基に、十数万件にも上る受給対象世帯の名簿データを独自に作成。名簿データと照合しながら、確認作業を進めている。担当者は「個人に紐付くマイナンバーカードを、世帯単位で給付する事務に使うのが間違っている」と天を仰ぐ。
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