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 大規模ビルの竣工が相次ぐにもかかわらず、空室率が1%を割り込むなど、極めてタイトだった東京都心のオフィス市況だが、新型コロナウイルスの感染拡大で環境は大きく変化している。業績悪化による解約の動きはもちろん、リモートワークの定着や出勤頻度の見直しも、旺盛だったオフィス需要に冷や水を浴びせるだろう。

 今夏に予定されていた東京五輪・パラリンピックの関連工事による建設需給のひっ迫で、都心には後回しになった再開発案件も多い。2023年にはオフィスの大量供給の山が控えているが、都心のオフィス街は今後、どのような景色になるのだろうか。

 オフィス賃貸の仲介や賃貸オフィス市場の調査などを手掛ける三幸エステートで市場調査部長を務める今関豊和氏に話を聞いた。

今関豊和(いまぜき・とよかず)氏
1987年東急建設入社。開発営業部門に在籍するとともに、米国デンバー大学でMBA取得。99年ジョーンズ ラング ラサール(JLL)東京オフィスのリサーチ部門ヘッド、2004年ラサール インベストメント マネジメントのシカゴ本社と東京オフィスで日本向け私募ファンドに対する投資戦略立案およびグローバルリサーチ業務を担当。06年米国ジョージア州立大学経営大学院博士課程入学。博士号(Ph.D.)取得。10年から現職。13年から三幸エステートのグループ会社であるオフィスビル総合研究所の代表取締役も兼務する。

4月末に東京都心5区(中央、千代田、港、新宿、渋谷)のオフィス市場の予測リポートをまとめています。

今関豊和・市場調査部長:4月10日時点のニッセイ基礎研究所のマクロ経済の予測値を使って分析をしました。特徴としてはまず、失業率が上がる予測なので空室率の上昇は避けられません。3年後には目安となる5%を超えます。一方の賃料はあまり下がらずに横ばい程度で推移していきます。マクロ的に需要から見れば、パニックになる必要がない状態だと言えます。ただ、足元でビルオーナーが過剰反応して貸し急ぎ、募集賃料の引き下げに動き出すことで、数字が下振れする可能性はあります。

空室率が上がるにもかかわらず、賃料は下がらないのですか。

今関氏:空室率の上昇と賃料の下落は同時には起きません。空室率が上昇してしばらくして、あるレベルにまで達してから初めて賃料は下がるんです。空室率4~5%が借り手・貸し手市場の境目だとされています。リーマン・ショック時には8%を超え、明らかな借り手市場になりました。空室率がこうした一定のレベルに達するまでは、貸し手市場が続くので、賃料は下がりません。

 一般的に賃料が下がるまでの流れはこうです。オフィスを解約するには退去の半年前に通知する必要があるので、過去のリーマン・ショックや現在の新型コロナウイルス感染拡大のようなイベントが起きても空室率に反映されるまでには半年かかります。そして空室率の数字が出ると、マーケットが状況の変化の読み込みをスタートし、そこから半年ぐらいして賃料が下がり始める。フリーレントの期間を延ばすなど、賃料ではない形でマーケットに対応していたビルオーナー側が、いよいよ持ちこたえられなくなって、賃料引き下げに踏み切るわけです。

 今回の分析のベースとなるマクロ経済の予測値は今年7~9月期にはコロナの影響が解消することを前提にしていますが、仮にそうであれば、少なくとも今後3年は賃料を大きく下げるレベルまでにはオフィスの需給バランスは緩みません。しかし、2023年以降はどうなるか。