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 田中角栄が打ち出した「日本列島改造論」から約半世紀。日本社会は一転して人口減少局面に入っている。ヒトもカネも限られる中、全国各地で“撤退戦”を強いられる今こそ、日本全体を調整する列島改造論が必要ではないか。

 「2020年に東京圏への転出入を均衡させる」という目標を掲げ、政府が地方創生の取り組みをスタートさせて5年が経過した。東京への一極集中は止まるどころか、過去3年はむしろ転入超過が拡大している。

 ただ、そんな東京にも未曽有の高齢者人口の増加という課題が迫っている。需要の急増に果たして医療・介護の現場は耐え得るのか。大都会ゆえに地縁関係のようなネットワークも乏しい。「勝ち組」の印象が強い東京だが、持続可能性には疑問符が付く。

 「30年前に市内に家を建てたが、年を取って手入れに困っている。車がないので病院に通うのも不便。手放したいが、かといって有料老人ホームに入るのも」……。こうした地元の声に押される形で計画されたシニア向け分譲マンションが2月に千葉県浦安市で完成し、今月から入居が始まっている。

 立地するのは東京メトロ浦安駅やJR新浦安駅のいずれからもバスを使って、15分ほどの浦安中央病院を核にした再開発エリア。1LDKと2LDKのタイプがあり、部屋の広さは平均で60平方メートルで、計88戸を分譲する。コンシェルジュが控える2層吹き抜けのエントランススペースや、落葉樹や山野草を配した季節を感じられる中庭が印象的で、外光の入る開放的な大浴場やカラオケルームも備えている。

 施設そのものはもちろん、病院が隣接するのが何よりの売り。入居にあたっては無料で健康診断や頭部MRI(磁気共鳴画像装置)検査を受けられる。また、異変があった場合には24時間の通報システムがあり、すぐに適切な処置を受けることができるという。

通常のマンションと異なり、完成物件を実際に見学してから購入するケースが多いため、ルミシア浦安舞浜の足元の入居率は3割程度。1年かけて全戸を販売する計画だ

 浦安中央病院が開院から30年以上がたち老朽化する中で、現在地への新築移転と同病院を核にした再開発構想は浮上した。ただ、同病院とミサワホーム、京葉銀行、浦安市として再開発の方針が具体的に固まった2015年時点では、このシニア向け分譲マンション「ルミシア浦安舞浜」の計画はなかった。

 当初の再開発計画は、病院の移転に合わせて隣に、複合施設を整備するもの。複合施設の1~2階には保育所や調剤もできる薬局、高齢者向け介護サービスの相談窓口などが入り、3~6階は賃貸住宅とした。すると、冒頭のようなニーズから、この賃貸住宅を売ってほしいとの声が相次いだのだ。

率ではなく実数で見ると、高齢化は深刻

 浦安市は東京の日本橋や大手町といった都心のオフィス街へのアクセスに優れ、「東京でサラリーマンとして成功した地方出身者が多いエリア」(ミサワホームで分譲・事業推進課長を務める富樫昌生氏)。その第1世代が75歳ぐらいになり、住み替えニーズが生まれているのだ。

 東京五輪・パラリンピックの開催に向けた祝祭ムードの陰に隠れがちだったが、着実に進む首都・東京の老い。これまでは高齢化というと、若者の都会への流出に悩む地方の課題として捉えられがちだったが、今後は東京でこそ深刻化する。

 国立社会保障・人口問題研究所の分析によれば、45年には秋田や青森で75歳以上人口が約3割になる。一方で東京はといえば、16.7%にとどまる見通しだ。この数字を見ると、将来にも東京の方が事態がマシなように思えるが、ここに落とし穴がある。