「空飛ぶクルマ」と呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOL、イーブイトール)を手掛ける米国のスタートアップ(新興)企業ジョビー・アビエーションは、どのようなビジネスモデルを描いているのか。eVTOLによる移動サービスの予約アプリやバックエンドシステム、ユーザー体験といった同ビジネスに欠かせないデジタルサービス全般の責任者であるエリック・アリソン氏に話を聞いた。

新型コロナウイルスの感染拡大で航空業界は大きな影響を受けた。ジョビーにどのような影響はあったか?
パンデミック(世界的大流行)は、各方面に大きな影響を与えた。だが、ジョビーは早い段階から、パンデミックの収束後も事業を継続できるようにさまざまな対策を講じてきた。
例えば、全従業員を対象にオンサイト(現場)でPCR検査を行い、パンデミック中でも従来通り作業を進められるようにした。これにより、米連邦政府や州政府などの公的機関のガイダンスに従った新型コロナに対する安全対策を講じつつ、機体の開発や飛行試験だけでなく、商用化に必要な認証作業に関する取り組みを続けた。
パンデミック中にもかかわらず、現試験機の2021年までの累計飛行試験回数は延べ1000回に達している。そして、公的機関のガイダンスが緩和された現在、機体開発や認証作業などは一段とスピードアップしている。

事業モデルを教えてほしい。
我々の基本的なビジネスモデルは、米国で垂直統合的に移動サービス(エアタクシー)を運営することだ。機体から機体を構成する中核部品の開発・設計・製造、そして移動サービスまでを手掛ける。例えばウーバーテクノロジーズとの連携により、(出発地点から離着陸場までの)「ファーストマイル」と(離着陸場から目的地までの)「ラストマイル」の移動を含めて、スマートフォンのアプリを通じて移動サービスを一気通貫で提供できるようになる。このように適宜、適切な方法でほかの移動サービスとのシームレスな連携を図っていく。
米国外では、移動サービスについて、世界トップクラスのパートナーとさまざまな提携の機会を検討している。国や地域によって、規制やオペレーションは異なる。例えば、日本ではANAホールディングスと提携している。安全性に関するトップクラスの賞を獲得しているANAのような航空会社と提携できたことは、非常に喜ばしい。韓国市場では、通信大手のSKテレコムと提携している。
市場が変われば、提携先の業種も変わる。ただし、我々の移動サービスを国や地域ごとに適合させていくという方針は変わらない。将来的には、さまざまなタイプのビジネスモデルと、それに合致したパートナーシップの機会が生じると考えている。
移動サービスにおける提携だけでなく、サプライヤーとの提携も重要だ。日本企業との提携も視野に入れている。例えば、炭素繊維複合材のサプライヤーで、優れた材料技術を有する東レなどがいい例だ。

トヨタ自動車との関係が深い。
トヨタ自動車は、ジョビーが成功する上での非常に重要なパートナーだ。投資家という側面だけでなく、量産に向けたエンジニアリングで多大な支援を受けている。トヨタの製造技術は世界トップクラスで、学ぶべきことがたくさんある。機体製造でトヨタの支援を受けていることは、我々の成功につながると思っている。
既にトヨタの技術者など数十人が、我々と一緒に働いている。組み立てや製造工程を想定した設計について、彼らの知識は非常に貴重なものだ。機体や組み立て治具の設計、製造設備の選定、製造プロセスの改良に至るまで、生産性や信頼性の向上につながる幅広い支援を得ている。こうしたサポートは、金銭では得られない大きな価値だ。現在はトヨタの協力のもと、機体製造のパイロットラインの構築に集中している。
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