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 米オキュラスを2014年に20億ドルで買収してからおよそ6年。米フェイスブックがVR(バーチャルリアリティー)で再び攻勢に出る。同社は20年10月、VR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)の新型機「Oculus Quest 2」を発売する。同機は、19年5月発売の「Oculus Quest」(以下、初代Quest)の後継機。性能向上と約10%の軽量化を実現し、大幅に価格を下げた戦略製品だ。多くの企業がほぼ一斉にVR用HMDを発売した16年は「VR元年」とされたが、その後は期待したほど市場は急成長しなかった。フェイスブックはQuest 2で巻き返しを図り、20年を真のVR元年にすると意気込む。

 Quest 2では、ストレージの容量が64ギガバイトと256ギガバイトの2機種を用意。価格はそれぞれ299ドル(日本では3万3800円)と399ドル(同4万4800円)とした。初代Questの64ギガバイト品は399ドルだった。299ドルという価格は、「ハードウエア単体では赤字で、ソフト販売で利益を出す事業モデルではないか」(HMDの動向に詳しいある電子部品メーカー社員)と考えられるほど安い。

「Oculus Quest 2」(出所:フェイスブック)

ハードもソフトも好調なQuest

 赤字覚悟でQuest 2をフェイスブックが繰り出す理由は、初代Questの成功で自信を深めたことにある。フェイスブックのAR/VR部門の責任者であるアンドリュー・ボスワース氏は、「我々が想像したよりも大きな成果を上げた」と胸を張る。特に、新規ユーザーの開拓に大きく寄与した。20年に初代Questを購入した9割以上のユーザーが、HMDを初めて利用するユーザーだったという。

 19年の発売以来、初代Questは常に品薄の状態だったという。コロナ禍による外出制限で「巣ごもり消費」が増加し、その状況に拍車がかかったのは想像に難くない。Quest 2は価格を100ドル下げたことで、初代機を上回る人気を得そうだ。フェイスブックは品切れを防止するために、初代Questのときよりも多数のQuest 2を用意しているという。Quest 2向けに部品を納入しているサプライヤーも、「かなり強気な発注数だ」と話す。

初代Questの本体とコントローラー

 初代Questがヒットしたことで、Quest向けコンテンツの売れ行きも好調だ。20年9月時点で累計売上高は1億5000万ドルを超え、35タイトル以上が売上高100万ドル以上に達したという。ゲーム機で大ヒットしたゲームに比べて1~2桁小さい金額だが、「(個人や小規模な企業などが開発したゲームを指す)『インディーゲーム』としてみると好調な売れ行き」(ゲーム業界に詳しいアナリスト)。Quest向けコンテンツは中小規模の企業が開発したものが多く、Questのエコシステムは十分魅力があるプラットフォームだと言える。