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 米アップルが、「Apple at Work」と銘打って展開しているエンタープライズ(法人)向け事業を強化している。法人向けの機器管理を手掛ける米国の新興企業を6月に買収したほか、7月にはNTTドコモと協業し、日本国内の法人営業を強化。加えて、コロナ禍で急増する在宅勤務(WFH:Work From Home)に向けてWebサイトを大幅に刷新した。8月にはカメラやマイクの機能を強化し、在宅勤務に向く新型パソコンを投入するなど、矢継ぎ早に手を打っている。

在宅勤務用の情報を掲載したアップルの日本語サイト。「ビデオを見る」を押すと、アップル製品を利用した在宅勤務をテーマにした、日本語字幕付きのドラマ映像を見られる

 コロナ禍による在宅勤務や遠隔授業の増加で、パソコンやタブレット端末の需要が世界で伸びている。アップルも同様で、「Mac」や「iPad」の大幅な販売増加につながった。コンシューマー向けや映像・音楽といったコンテンツ制作の分野で大きな存在感を持つアップルにとって、法人事業は伸びしろが大きい。在宅勤務の場合、個人用途と業務用途の境界が曖昧となり、両用途に向けたパソコンやタブレットを求める声が高まるだろう。在宅勤務の増加はアップルにとって、業務分野における「Windows一強」を変える契機になり得る。

 実際にアップルは、Windowsパソコンだけで仕事をしていた人々が、在宅勤務を機に同社製品を初めて利用するケースが増えたとする。その結果は、2020年4~6月期の決算に表れている。遠隔授業での需要増も相まって、iPadの売上高は前年同期比で31%増の65億8200万ドル、Macの売上高は同22%増の70億7900万ドルと絶好調だった。いずれも20年1~3月期決算では前年同期比で減収となっていたが、4月以降は教育や仕事の遠隔化の加速で売れ行きが回復するとみていた。蓋を開けてみれば4~6月期は回復にとどまらず、2桁成長を遂げた。

 iPhoneも法人向け市場開拓のチャンスが広がる。例えば日本では在宅勤務を機に、オフィスの机にあった固定電話の代わりに企業が従業員にiPhoneを配布するケースが増えたという。

日米の大手通信事業者とタッグ

 こうした背景から、法人市場のさらなる開拓に向けアップルは大手通信事業者と手を組んだ。例えば日本ではNTTドコモとタッグを組み、同社がApple at Workを独占的にプロモーションする。NTTドコモの法人向けサイトにはApple at Workの専用ページが設けられている。もともと日本では、NTTドコモだけでなく、KDDIやソフトバンクも法人向けにアップル製品を販売してきた。今回のドコモとの協業を契機に、同社を通じて従来以上に力を入れて法人向けに営業するようだ。

 既に米国では、米AT&Tと同種の取り組みをしており、日本の通信事業者ではNTTドコモが初だという。アップルがドコモとタッグを組むのは、ドコモの法人営業網を期待してのこと。法人のITシステム部門と接点を持つドコモの営業網は、アップルにとって魅力的である。