新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるべく米国で実施されている外出制限措置により、人が乗る自動運転車の開発に逆風が吹いている。乗客を運ぶ自動運転車の試験サービスや公道試験が軒並み一時休止に追いやられた。

 2020年5月から外出制限がやや緩和されたことで、米ウェイモなど一部の企業が試験サービスを再開したものの、苦しい状況であることには変わりがない。自動運転車の多くが、複数人を乗せて運ぶ「ライドシェア」を前提にしたビジネスモデルを描く。だが、不特定多数の乗車は新型コロナに感染するリスクが高まると捉えられており、シェアエコノミー全般が苦境に立たされている。

 一方で、食料品や医薬品などの配送需要の急激な高まりから、自動運転技術を手掛ける新興企業の中には、配送に活路を見いだす動きが出てきた。人との接触を避ける「コンタクトレス」配送や省人化に向けて、シリコンバレーの企業が試験サービスなどの取り組みを本格化している。コンタクトレス配送の動きは空にも及び、ドローンによる無人配送の動きも活発化し始めている。

ベイエリアの集合住宅の共用部に置かれた荷物群(写真:シリコンバレー支局)

 ドライバーがいない自動運転車やドローンであれば、コンタクトレスで荷物を配送できる。米国では荷物を建物の前に置く「置き配」が一般的で、配達員に直接会わなくても荷物を受け取れる。ただし、配達員が新型コロナに感染している場合、荷物を通じて感染する恐れがある。

 住宅の屋外や集合住宅の共用部に置かれる場合が多く、盗難に遭うリスクも付きまとう。無人の自動運転車で配送し、それを送り先の人物が受け取れば、こうしたリスクが減る。企業側からすると、配達員不足や配達員の安全性の確保、待遇改善を訴えるストライキなどに頭を悩ませずに済む。

 シリコンバレーの新興企業の中で目立った動きを見せている1社が、米ニューロ(Nuro)だ。同社は4月22日、新型コロナの感染者を収容・治療する施設などに対して、レベル4(特定条件下での完全自動運転)相当の自動運転機能を備えた小型電気自動車(EV)「R2」による配送を開始したと明らかにした。感染者の収容施設に転用した、バスケットボールリーグ「NBA」のスタジアムだったサクラメントの「Sleep Train Arena(STA)」に医薬品を、新型コロナに関する試験施設や代替住宅地、野営病院などとして利用されているサンマテオ郡の多目的施設には、水や食料を配送しているという。

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