物流コストや人件費の上昇が米小売業界に暗い影を落としている。米アマゾン・ドット・コムは2022年1~3月期に7年ぶりの最終赤字に転落した。背景にはコロナ禍を契機とした電子商取引(EC)の急増がある。物流のひっ迫が長期化しており、解決策として技術で物流の効率化や自動化を目指す「物流テック」が盛んになっている。

22年3月開催の「MODEX 2022」の展示会場。来場者の大半はマスクを着けていなかった
22年3月開催の「MODEX 2022」の展示会場。来場者の大半はマスクを着けていなかった

 物流コストや人件費の上昇が米小売業界に暗い影を落としている。米アマゾン・ドット・コムは2022年1~3月期に7年ぶりの最終赤字に転落した。売上高は1164億4400万ドル(約15兆円)と前年同期比7%増と好調だった一方、最終損益は38億4400万ドル(約5000億円)の赤字に陥った。

 出資する新興電気自動車(EV)メーカーの米リヴィアン・オートモーティブの株式評価損という一時的なマイナス要因があったものの、深刻なのは長期化が予想される物流関連コストの増加だ。アマゾンは、輸送費、人件費の高騰や固定費の増加などによるコストアップが約60億ドル(約7800億円)に達したと分析する。

 物流のひっ迫は、新型コロナウイルス感染症の流行を契機に急拡大した電子商取引(EC)が原因だ。コロナ禍がピークを過ぎた今日でも、米国では依然として物流の問題はほぼ未解決のまま。そこで動きが活発になってきたのが「物流テック」の開発。物流の効率化や自動化を目指す最先端の技術だ。

 実際、物流テックの新興企業には多額の資金が流入し始めている。アマゾンは4月に物流テック分野の新興企業を対象に10億ドル(約1300億円)規模の新しいファンドを創設。5月にもECサイト構築大手であるカナダのショピファイが、米物流新興のデリバーを21億ドル(約2730億円)で買収すると発表したばかりだ。

 その熱気は、3月末に米アトランタで開催された米国最大級の物流分野の展示会「MODEX 2022」でも感じられた。

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