機器だけでなく、プロセッサーといった主要部品まで自分たちで設計する「自前主義」の米アップルが、5Gなどの通信でもその動きを加速させている。同社は2021年3月、ドイツ・ミュンヘンにある拠点を拡大すると明らかにした。ミュンヘンは既に同社の欧州最大の研究開発拠点で、約40カ国から集まった1500人ほどの技術者がパワーマネジメント(電源管理)ICやアプリケーションプロセッサー(AP)、無線技術などの研究開発に取り組んでいる。

 今後、さらに数百人の従業員を加えて、5Gのような無線技術やコネクティビティーに特化した研究開発施設を新たに設ける。今回の規模拡大にともない、研究開発への追加投資と合わせて、今後3年間だけで10億ユーロを超える投資を行う予定だ。これまで米クアルコムから調達してきた移動通信部品を自分たちでそろえることで、同社からの依存脱却を目指す。

ミュンヘンに設ける新施設のイメージ(出所:アップル)
ミュンヘンに設ける新施設のイメージ(出所:アップル)

 アップルは、iPhoneなど自社製品に搭載する主要な半導体部品の内製化にこれまで注力してきた。例えば、アプリケーションプロセッサーやGPU、電源管理ICなどだ。20年には、パソコン用プロセッサーでも米インテル製から自社製に約2年かけて切り替えていくと宣言。同年11月に「M1」プロセッサーとその搭載製品を発表した。

 5G通信用半導体の研究開発強化もこの流れにある。iPhoneとして初めて5Gに対応した最新機種「iPhone 12」シリーズでは、クアルコム製の5G通信用半導体を利用している。だが、アップルにとってこの状況は苦痛であろう。

5Gに対応したiPhone12(写真:ZUMA Press/アフロ)
5Gに対応したiPhone12(写真:ZUMA Press/アフロ)

 アップルとクアルコムは初代iPhoneのころから、無線通信規格の特許ライセンスを巡って争ってきた。端的に言えば、クアルコムに支払う高額なライセンス料でもめてきた。潮目が変わったのは19年だ。同年4月、両社は特許ライセンスを巡る一連の訴訟を取り下げることに合意。それまでアップルはクアルコムに対して、特許ライセンスと移動通信用半導体の取引が不当であるとして提訴していた。この和解により、アップルはクアルコムに未納だったライセンス料を支払った。クアルコムが発表した19年7~9月期の決算によれば、47億ドルをアップルから受け取ったという。

 加えて両社は19年4月1日から発効する6年間のライセンス契約を締結した。この契約には最大で2年間の期間延長のオプションが含まれている。

 もっとも、アップルはこのままクアルコムの軍門に下るつもりはなかった。

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