北朝鮮のIT技術者が、身分を隠して日本の受発注仲介サイトでソフト開発を請け負っている。兵器開発に必要な外貨を獲得するためだ。先月には兵庫県の防災アプリの改修業務を請け負っていたことが発覚した。産業界では仲介サイトを通じてフリーランスに各種業務を依頼する「クラウドソーシング」が活発になっている。だが日本を狙う兵器の開発を手助けするリスクが潜んでいることを忘れてはならない。
「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。頑丈な建物、または地下に避難してください」
米軍の人工衛星や自衛隊のレーダーが、北朝鮮から弾道ミサイルが飛んでこないかを常時監視している。発射を検知し、日本に飛来する恐れがあると判断すれば、政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)を使って該当する自治体などに警戒情報を発することになっている。自治体は防災行政無線や電子メールで頑丈な建物への避難などを呼びかけ、住民の安全確保を図る段取りだ。

兵庫県も県の防災アプリ「ひょうご防災ネット」の利用者にメールで警戒情報を発信する体制をとる。だが警察の捜査で北朝鮮のIT技術者が防災アプリを開発していたことが先月、発覚した。
米FBIの警告
北朝鮮の軍需工業部や朝鮮人民軍などに所属するIT技術者らが身分を偽って各国でソフト開発業務を請け負っており、兵器開発に必要な外貨を稼いでいる――。米国の連邦捜査局(FBI)や国務省、財務省は先ごろ、そんな内容の共同声明を発表した。兵庫県民の生命と財産を守ることを目的とした防災アプリが、北朝鮮による兵器開発の資金獲得に利用されていたとすれば、あまりにも皮肉だ。
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