日本政府が4日7日に緊急事態宣言を発令してから国内でインターネットの通信量が急増していることがネット配信インフラ大手の米アカマイ・テクノロジーズ日本法人への取材で分かった。発令した直後の4月8〜11日の4日間は、前年同期と比べて67%増えた。1週間前(4月1〜4日)と比較すると21%増だ。

 新型コロナウイルスへの警戒が高まった1月以降、関連する情報をネットで集める人が増えるなどして、国内の通信量は徐々に増加していた。今回の緊急事態宣言で法的に外出の自粛要請が出たことを受け、仕事や娯楽、買い物を自宅からネットでこなす人が一気に増大した。

 対照的に緊急事態宣言の対象となった東京、大阪、福岡など7都府県では人出が激減している。

緊急事態宣言後、東京・渋谷の人出は激減した(写真=アフロ)
緊急事態宣言後、東京・渋谷の人出は激減した(写真=アフロ)

 携帯電話の位置から人の動きを調査しているNTTドコモによれば、4月15日15時時点の東京・渋谷の人出は、緊急事態の宣言直前となる4月7日の同時刻と比べて39%減り、感染拡大以前(1月18〜2月14日の平日平均)と比較して65%減った。大阪・梅田周辺もそれぞれ52%減、71%減となった。

米ニューヨークや韓国でもネットの利用増える

 外出を控える代わりに、対面の会合は「Zoom」などのビデオ会議に、店舗での買い物はアマゾンなどのネット通販に、映画館での上映はネットフリックスなどの動画配信に移行し、通信量の増大につながった。アカマイ米本社によると、米ニューヨーク、フランス、イタリア、韓国でも、外出の自粛要請など行動制限が強まった日を境に、ネットの通信量が増えている。

 世界的に株価が下落する中、Zoomを運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、米アマゾン・ドット・コム、米ネットフリックスが逆行高の傾向にあることは、「特需」が一過性のものではないと投資家たちがみていることを示唆する。日本で電子契約サービスを手掛けるペーパーロジック(東京・品川)が3月上旬に実施したアンケート調査によれば、「勤務先でテレワークが今後進んでほしいと思うか」という質問に対して、「強く思う」「思う」が合わせて96%に上り、一部で「巣ごもり」需要が定着の兆しをみせている。

 外出せずに、ネットで用事を済ませる効率的なライフスタイルがどこまで定着するかを見極めるには、新型コロナ終息後の通信量や人の動きに関する統計が重要な指標になりそうだ。

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