デリバリーやテークアウトに特化した飲食店「ゴーストレストラン」が急増している。コロナ禍で大打撃を受けたイートイン(店内飲食)を補う「副業」とみられがちだが、実は外食産業のビジネスモデルを変革する潜在力を秘めている。

シェア型ゴーストレストランの「KitchenBASE 中目黒」は4つの厨房に、複数の外食店が同居している
シェア型ゴーストレストランの「KitchenBASE 中目黒」は4つの厨房に、複数の外食店が同居している

 2019年6月に開業した東京・中目黒の「KitchenBASE 中目黒」は、シェア型のゴーストレストランだ。来店客が食べるスペースはなく、約2坪の厨房が4つ並ぶシンプルな構造となっている。

 中華、タコス、海鮮丼、ニューヨーク風の屋台飯など様々な料理がウーバーイーツや出前館などの宅配サービスを通じて送り出されている。ただ、それぞれ別の店舗(ブランド)が提供している。1か所に、5つのブランドが同居するゆえの「シェア型」だ。

 店舗全体を運営するのは外食ベンチャーSENTOEN(東京・千代田)。うち2ブランドは自社で運営し、残りは別の外食店が場所を借りている形だ。キッチンだけでなく、デリバリーの注文を受け付けるための端末の設定、商品撮影、専用ウェブサイトでの収益管理など開業に必要な準備を整え、入居する外食店は料理を作るだけ。最短1カ月で開業できる。

 外食業は、廃業が多いことで知られる。16年の経済センサス活動調査によると、90超の全業種のうち、「飲食店」の廃業数は11万5813。2番目の「その他の小売業」(5万3819)をはるかに上回る。コロナ禍でも家賃が重荷になり、閉店するケースが相次ぐ。しかし、キッチンベースなら、イートインを想定した通常の外食店の初期コストが1000万円だとすると、10%ほどの費用で済むという。

 山口大介代表は「開業当初はゴーストレストランという言葉自体が外食業界になじんでいなかったが、今は市民権を得た。初期コストが下がれば、参入者が増えて外食業界にイノベーションが起きやすくなる」と話す。20年10月には、東京・神楽坂に2拠点目を開くなど、勢いを増している。

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