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 新型コロナ禍は、外食店経営の常識をいとも簡単に覆した。

 繁華街の路面に競うように出店し、グルメサイトを使って新規顧客を呼び込み、満席にするという「外食経営のセオリー」がもろくも崩壊。好立地の高い賃料は重しになり、密な店内は来店客を遠ざけ、グルメサイトは常連客の確保に十分な力を持てていない。

 外食向けITサービスを手掛けるトレタ(東京・品川)の経営者で、外食店オーナーでもある中村仁社長に、アフター・コロナの外食経営について聞いた。

客足は従前の6割

外食店向けのインターネット予約システムを手掛けるトレタの経営者でありながら、外食店のオーナーでもあります。

中村仁・トレタ社長(以下、中村氏):2000年に外食運営企業を設立し、豚料理の「豚組」や和風スタンディングバー「壌」など6店舗を運営しています。トレタは13年に創業しました。

 30年前とほぼ変わらない外食店の経営をテクノロジーでアップデートしたいと考え、インターネットで顧客を管理する予約台帳システムを開発しました。複数のグルメサイトと連携して、ネット予約情報をとりまとめることで、スタッフの業務を効率化できます。

中村 仁(なかむらひとし)氏
1969年生まれ。大手家電メーカー、外資系広告代理店を経て、2000年に外食経営のグレイス(東京・港)を設立。立ち飲みブームのきっかけとなった「西麻布 壌」や、高級とんかつ専門店「とんかつ 西麻布 豚組」、高級豚しゃぶ店「豚組 しゃぶ庵」などを運営する。Twitterを活用した集客が注目され、「外食アワード2010」(外食産業記者会)を受賞。2013年にトレタを創業して、外食店向けの予約と台帳をデジタル管理するサービスを提供している。著書に『外食逆襲論』(幻冬舎)など。

東京・六本木にある豚しゃぶ専門店「豚組しゃぶ庵」を閉店するとうかがいました。新型コロナ禍の影響が大きいのでしょうか。

中村氏:非常に大きいです。緊急事態宣言を受けて4月に休業して、宣言解除後に再開しましたが、客足は従前の6割にとどまっています。仮にコストを切り詰めて、足元の危機を乗り切れても長期的な経営の安定は難しいという結論に達しました。名古屋市にある「豚組しゃぶ庵 名古屋」についても、閉店を含めて今後を検討しているところです。

東京・六本木「豚組しゃぶ庵」は13年の歴史に幕を下ろし、オンラインに「引っ越しする」という。

コロナ・ショックの影響は、短期にとどまらないと考えたのですね。

中村氏:コロナ禍で多くの人が外食機会を減らし、密な環境で外食を楽しむ習慣はしばらく戻ってきません。リモートワークが定着すれば、会社帰りに飲んで帰る習慣も減る。感染の第2波、第3波が来れば、再度休業を強いられるかもしれませんし、そうでなくても時短営業やテーブルを一つおきに使うなど対応が迫られます。

繁華街から住宅地へ

東京・六本木という日本有数の好立地なら、客足の戻りは他の地域よりも早いと期待できないでしょうか。

中村氏:むしろ、「繁華街の(道路に接して見つけやすい)路面店」という外食業界の成功の方程式が崩れてしまった。従来の「勝ち筋」がゼロどころか、マイナスに陥ってしまったと感じます。