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インスタグラムがグルメサイトのポジションを脅かしている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、インスタグラムがテークアウトの注文受け付けなど飲食店向け機能を充実させ、使い勝手が高まった。コロナ後の外食店経営は、コスト削減と来店頻度の高い常連客づくりが鍵になる。有料広告型のグルメサイトは、交流機能とネット通販機能を備えたインスタグラムに対し、有効な対抗軸を見いだせずにいる。

 1928年創業の会席料理「本家たん熊 本店」(京都市下京区)は5月中旬、京都市内を対象にインスタグラムでテークアウトとデリバリーの受け付けを始めた。「料理を注文」ボタンを押せば、外部の予約システム「テーブルチェック」に遷移して注文できる。新型コロナウイルスで苦しむ外食店を支援しようと、インスタグラムが4月下旬に設けた新たな機能だ。

1928年創業の会席料理「本家たん熊」のテークアウト商品「すっぽんの吸い物(5人前)」1万800円(税込)

 新型コロナを機にテークアウトやデリバリーの充実を図ることにしたが、世間のインスタグラムのイメージは「若い層の利用が多い」。客単価が2万円程度で、客層の年齢が高めな本家たん熊の場合、どこまで効果があるか懸念はあった。

 ただ、いざ始めると杞憂(きゆう)に終わった。「50~60歳代の常連客が『インスタ見たよ』と買いに来てくれた」と若主人の栗栖純一さんは話す。実は、デリバリーは京都・祇園の花街に料理を届けるなどコロナ前から取り組んでいたが、インスタグラムで初めて知った常連客が少なからずいた。インスタ効果で、デリバリーとテークアウトの売上高は30%程度伸びているという。

「#テイクアウト」投稿が25倍に

 インスタグラムのデータを分析するテテマーチ(東京・品川)が顧客のアカウント約2万件を分析したところ、5月末時点の業種別件数は、アパレルが2108件とトップで、雑貨・小売りが911件、飲食は696件だった。

 インスタグラム活用のアパレル先行は、ほかの数字を見ても明らかだ。アパレル業界による最初のインスタグラム投稿は2010年10月頃だった。これに対し、飲食は12年1月と遅れた。5月末の平均フォロワー数もアパレルが1万4583に対し、飲食は4234と大きく見劣りする。

 インスタグラムには、投稿した衣料品や雑貨の写真をタップすると注文画面に遷移するなどアパレル通販向きの機能が備わっている。このほか、業界でおなじみの影響力があるインフルエンサーによる販促もあって、インスタとの相性が良かった。

 これに対し、飲食業界は、グルメサイトがインターネット予約の受け皿になってきた。これも、アパレルに差をつけられた理由になっているようだ。

 しかし、新型コロナはこうした景色を一変させた。テテマーチによると、「#テイクアウト」のフィード投稿数は、2月に比べて、3月が2倍超、4月は約20倍、5月が約25倍と急速に伸びた。テークアウト注文機能の新設はもちろん、ビジネス用アカウント開設が無料という点が大きい。

 グルメサイトも「テークアウトが可能なお店の特集」を始めたり、利用料を一時的に減免したりした。しかし、平常時の利用料は1店舗につき毎月数万円から数十万円に上る場合がある(外食店で始まった「脱グルメサイト」、揺らぐ共存共栄)。中長期的なコスト削減を見据えてインスタ活用を模索する飲食店が増えているようだ。テテマーチは「アパレルに遅れたが、飲食店のインスタ活用は今年秋頃まで拡大が続く」とみる。

日本人は世界の3倍、「#検索」

 日本でのインスタグラムの利用は、「#(ハッシュタグ)検索」が多いという特徴がある。「#検索」数はグローバル平均の3倍に上り、日本の利用者の4人に1人が利用している。「#渋谷ランチ」など実用的な口コミ検索のほか、「#グルメ好きな人と繋がりたい」、「#グルメスタグラム」など趣味や好みが近い人を探す用途で使われている。

 今まで食べログなどグルメサイトが担ってきた口コミ機能をカバーしているほか、お店とお客が直接つながって常連客づくりがスムーズになる効果も期待できる。本家たん熊の栗栖さんは、「いろんな立場からの口コミが氾濫するグルメサイトより、オフィシャルな正しい情報をインスタグラムで発信した方が、正しい店のブランドイメージをお客様に持ってもらえる」と話す。