転換点になりうる

 また、複数のグルメサイトを併用する外食店は、予約管理の業務を便利にするため、サイトの予約情報を収集してまとめる「予約台帳サービス」を使うケースが増えている。サービスを利用したことのある外食店の約13%が「サイトから予約管理システムの利用を控えるように求められた」と回答。公取委は、「グルメサイトから接続を遮断されれば、予約管理システム業者は競争上不利になる。また、外食店の予約管理業務の負担が重くなり、多くのグルメサイトと取引がしづらくなる」とし、独占禁止法上の問題(取引妨害)となる恐れがあるとした。

 今回の報告書に対し、関係者からは外食店がグルメサイトに集客を依存する現状の転換点になり得ると評価する声があがった。予約台帳サービスを提供するテーブルチェック(東京・中央)の谷口優CEO(最高経営責任者)は「今回の報告書は広範囲に業界の問題点を取り上げてくれた。飲食店と消費者の間にいる中間業者(グルメサイト)が過剰に利益を得ている状況が、飲食店や消費者に不利益を与える。プラットフォーマーになり得る企業は透明性を高めることが必須だ」と話した。

 別の飲食系ベンチャーは報告書を歓迎しつつ、「ユーザーがグーグルなど検索エンジンを使ってお店を検索したのに、結局グルメサイトの集客実績として積み上がってしまう問題にも触れて欲しかった」と話した。

 今回の報告書は、店選びに欠かせない存在になったグルメサイトが、外食店に対して優越的地位を持ち、独禁法違反になりうると警鐘を鳴らした。ただ、この優越性は、グーグルマップやインスタグラムなどSNSで店探しをするユーザーの増加で、弱まっている。

 報告書では、約85%のユーザーがグーグルなど一般的な検索エンジンを使って、飲食店の情報にたどり着いているとし、「検索エンジン事業者が、グルメサイトの競争者と評価できる場合は、本調査の考え方を適用する余地がある」とし、今後もグルメサイト業界の競争環境を注視するとした。グルメサイトからは「(グーグルなど)検索エンジンが、自社サービスの検索結果を優先表示されると困る」という不安の声も上がっている。

 グルメサイトはグーグルなどの台頭を受けて、インターネット予約した来店客にポイントを付与することで、サイトパワー(集客力)を維持しようと腐心している。外食コンサルティング会社の幹部からは、「ポイントに魅力を感じるユーザーは今後もサイトを利用し続けるから、今回の報告書でサイトの運営が大きく変わることはないだろう。報告書は踏み込みが甘いところも感じる」と冷めた意見もあった。

 日経ビジネス電子版は3月13日から、外食業界とグルメサイトの関係の変化を追う連載記事「グルメサイトという幻」を掲載しました。以下のリンクから記事をご覧ください。

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