飲食店のグルメサイト離れの背景には、インターネット予約の「限界」もある。ホテルや航空機など観光業界で先駆けて広がったインターネット予約だが、飲食業特有の座席事情に加え、グルメサイト同士の競争が利便性向上の壁になっている。

外食店向けのコールセンターを運営するトレタCC(東京・品川)。顧客から多くあるクレームの1つが、「店に電話で聞いたら空席があると言っていたのに、ネット(グルメサイト)で予約できない」というものだ。飲食店がグルメサイトに掲載している「席在庫(インターネット予約用の空き席)」の数と、実際の店舗の空席数が異なるために起きる現象だ。
例えば、全30席のA外食店が、食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメの3つのサイトを併用しているとしよう。この場合、A外食店は各サイトに全席を開放することはまずない。食べログに10、ぐるなびに8、ホットペッパーグルメに7などと、合計30席を下回るように調整していることが多い。
こんな失敗例がある。2019年、あるレストランチェーンの店舗の店長が、グルメサイトの利用を勧める飛び込みの営業を受けて、店の全ての席を在庫として開放したところ、サイト、電話、自社ホームページからの予約でダブルブッキングが頻発して店は大混乱に陥ったという。この店長は客からの申し込み時点では仮予約で店舗が返事をすれば確定する「リクエスト予約」と、申し込みで即時確定する「即予約」とを誤解していた。グルメサイトのシステムに相次いで予約が入り、空席を消す作業が追いつかなくなった。
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