2019年4月に丸の内で開催された「生活のたのしみ展」の会場の様子
2019年4月に丸の内で開催された「生活のたのしみ展」の会場の様子

 人が本を読む理由は、教養への憧れや文化的な関心だけではない。目の前で誰かの話を聞いたり、誰かと言葉を交わしたりした体験が、思いがけず読書への入り口になることがある。そんな手応えを得た河野氏は、続いて読者が書店員や編集者と直接触れ合える空間を構想した。その結果が「本屋さん、あつまる。」だった。

 リニューアル後の渋谷パルコが6階に任天堂の直営ショップなどを呼び込んだことについて、河野氏は「考えた戦略だと感じた」と評する。「以前のパルコにはハイソ(上流階級的)な雰囲気があったが、今は少し違う。ゲームなどのコンテンツに対する好奇心や、クリエーターへの敬意が感じられる」(河野氏)。好奇心をかき立て、作り手とのつながりを感じさせるという狙いは、「本屋さん、あつまる。」にも共通する点だ。

 「本屋さん、あつまる。」の開催時期は今年2月下旬。新型コロナウイルスの感染拡大への不安が高まる時期だったが、消毒液を用意するなどの対策を講じて無事に終了した。しかし今年4月以降、外出自粛の動きは強まり、商業施設の多くが臨時休業に入っている。ただ、この状況は考えようによっては、読書への格好の入り口なのかもしれない。「行動の自由が制限されていても、本の中では自由に考えを巡らせ、旅をすることもできる」と河野氏は話す。

 書店なき渋谷パルコに期間限定で掲げられた「本」のサイネージはどこか皮肉めいた色を帯びてもいたが、本と読者の出合い方が変化しつつある今を象徴する光景だったのかもしれない。いずれにしろ、外出自粛や休業が続く中で、本と出合う場の価値が見直されていることは間違いない。

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