メルカリは10月末、クレジットカード事業への参入を発表した。自社クレカを「メルカード」と銘打ち、約1400万人の利用者を有するQRコード決済の「メルペイ」に並ぶ新たな決済手段として育成する考えだ。

 メルカリのフィンテック事業は難路を歩んできた。決算公告によると、メルペイは単体で2021年6月期までの3年間、計300億円以上の営業損失を計上。フリマアプリで稼ぎ出した利益がメルペイの還元や米国事業への先行投資で溶ける構図が続いてきた。利用者数の拡大に支えられ、メルペイは22年6月期にようやく黒字化し、調整前営業利益として15億円を計上できたが、メルカードの投入で黒字を継続できるかはまだ見通せない。

 ただ、クレカ事業は株式市場で高い評価を得ている。決算発表とともにクレカ事業への参入を明らかにした10月31日の終値と比較すると、足元(12月16日終値)で株価は13.3%上昇。「主力事業であるフリマアプリの流通取引総額(GMV)成長に貢献が期待できる」(JPモルガン証券の森はるか氏)「決済サービスの強化で個人間EC(電子商取引)市場での国内実質トップのシェアが一段と上昇する」(UBS証券の福山健司氏)とアナリストも評価する。

 主力事業の成長エンジンになり得るという評価だ。だが、利用者の多くがすぐにクレカを利用するかは未知数。後発での参入となれば、先行する他社とは異なる競争優位性が求められる。

 目玉の1つとなりそうなのがポイント還元だ。メルカリでの購入にメルカードを使うと最大4%のポイント還元はあるものの、コンビニや飲食店などで決済する際の一般的なポイント還元率は1%にとどまる。これは国内有数の発行枚数を誇る楽天グループの「楽天カード」と横並びにすぎない。

 22年4~6月期にフリマアプリの月間利用者数(MAU)が前四半期比で初めて減少するなど、かつての右肩上がりの成長とは異なる局面に入りつつあるメルカリ。9月30日時点で自己資本比率が10.7%まで落ちた同社にとって、還元率が派手とは言えないクレカ事業が再浮上の起爆剤となるのか。メルカリグループ日本事業責任者の青柳直樹氏に勝ち筋を聞いた。

青柳直樹(あおやぎ・なおき)
青柳直樹(あおやぎ・なおき)
メルカリ上級執行役員(メルカリグループ日本事業責任者)兼メルコイン代表取締役最高経営責任者(CEO) ドイツ証券、グリーを経て2017年にメルカリ執行役員。メルペイCEOなどを経て、22年1月から現職(写真:山下 裕之)

「競合は意識しない」

既に多くの人がクレジットカードを保有しています。キャッシュレス事業でメルペイに注力してきたメルカリが、なぜ今、後発ながらクレカ事業に参入するのでしょうか。

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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