(写真:共同通信)
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 2年4カ月ぶりの高値更新なるか――。

 14日の東京株式市場で投資家の注目を集めた銘柄の1つがメルカリだ。2018年6月19日の新規株式公開(IPO)当日につけた6000円の高値に近づいたからだ。一時前日比120円(2%)高の5930円をつけて年初来高値をつけたものの、その後は下げに転じて終値は50円(1%)安の5760円。上場来高値の更新はお預けとなった。

 上場後は米国事業やキャッシュレス事業への積極投資に伴う赤字拡大で株価は低迷。今年3月には1557円をつけていた。新型コロナウイルス禍によるフリマアプリの利用拡大や米国事業の採算改善もあり、株価は半年強で3.8倍にまで上昇した。メルカリフィーバーに沸いた上場初日につけた高値と、その後の低迷を経てつける高値では意味合いは変わってくる。

 新たなステージへ進もうとしているのは会社としてのメルカリも同じだ。飛躍に向けて苦闘しているのが、自ら切り開いてきた「マーケットプレイス(電子市場)」の原理・原則の策定だ。同社は外部の有識者会議を7月に設立し、これまでに議論を3回実施。一般ユーザーの意見も取り入れたうえで策定し、11月下旬にも公表する方針だ。

 メルカリの山田進太郎社長は8月の日経ビジネスの取材に対し、「現金の出品や、コロナ禍でのマスク転売など、想定外の使われ方で社会に摩擦を生む結果になった」としたうえで「どういうマーケットプレイスになるべきか。原理原則を定めていきたい」と語っていた。

 注目は「転売ヤー」対策でどこまで踏み込めるかだ。転売ヤーとは、市場流通量が少なく希少価値が高い商品などを高値で転売する人を指す。以前からその行為に対して問題視する声がネット上にあったが、それが極大化したのがコロナ禍でのマスクや消毒液の高額転売だった。

 政府は3月に国民生活安定緊急措置法の施行令を改正し、マスクの転売を罰則つきで禁止。5月には消毒用アルコール製品なども対象に加えた。メルカリは個別にマスクや消毒液、除菌シートなどの出品を禁止する措置を取り、政府が8月末にマスクなどの転売禁止を解除した後も出品禁止を継続している。

 一方、ゲーム機の「ニンテンドースイッチ」など品薄な人気商品の高額転売は続いている。メルカリの田面木宏尚上級執行役員は「(転売は)大きいテーマであることは事実」との見解を示しつつ「誰もが自由に売りたいもの、買いたいものを取引できる市場」の重要性を強調した。

 転売ヤーが高い価格を設定しながらも、その値段でも欲しいと思う人がいる以上、需給のマッチングは成立しているともいえる。一方、高額転売のために希少品を一部の人が買い占めるという行為に不快さを感じる人が多いのも事実だ。

 メルカリはこれまで、問題となる案件に対しては個々に禁止物出品委員会で審議してその都度判断を下していた。これまではすべてのルールをメルカリが策定してきた。だが、一方的に作るのではなく、外部識者やユーザーと一緒に作っていくことが好ましいとして、有識者会議を立ち上げた。

 有識者会議では「『店頭での品薄』を根拠として取引を制限する必要がない」として、マスクなどの生命や身体の保護、健康の維持にかかわる必需品の取引ではない一般の取引については、自由市場の確立を優先すべきだという声が多かったようだ。ネットの声=社会の声ではないとはいえ、どこまで社会を意識した原理原則を策定できるかが注目だ。

ネット企業に広まる「社会と向き合う」

 こうした社会の声に耳を傾け始めたネット企業はメルカリだけではない。LINEは8月、「有害なコンテンツへの対応方針」に関するパブリックコメントを募集した。メッセージなどコミュニケーション・プラットフォームとして広く浸透するLINE。だが、使われ方によっては、フェイクニュースの流布や、いじめやハラスメントの原因にもなりかねない。

 かといって、タイムラインやオープンチャットなどのコンテンツすべて(個別のメッセージは暗号化されていてLINEも見えない)を監視すべきかどうか。同社の公共施策戦略チームの兼保圭介マネージャーはパブリックコメントを実施した理由について「自分たちだけで一人よがりで決めてよいものではない」として、プラットフォーマーとしてどこまで介入すべきかを社会に問うことにした。

 ヤフーは今年4月に有識者会議を設置し、ネット通販のあり方や社会的責任などを議論した。同社は19年、信用スコア事業で個人情報が同意なく外部に提供されかねないとの社会的批判が高まった過去がある。社会との対話を重視する姿勢を見せている。

 今年5月、デジタルプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業を規制する法律が成立した。モール型ネット通販やアプリストア運営会社が対象で、ヤフーもその1社だ。巨大IT企業を規制する動きは国内外で広まりつつある。

 急速に成長し、サービスが拡大するIT大手。その成長の速さは時として、市場や社会の倫理の醸成をしのぐ。サービス利用者が増えて世間の注目を集める存在になると、自社単独でのルール設計には限界が生じて、社会との摩擦を生みかねない。メルカリやLINEがさらなる事業拡大を遂げるためには、この「成長痛」を乗り越える必要がある。

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12/15ウェビナー開催、「外食を救うのは誰か」第1回――すかいらーく創業者の横川氏が登壇

 新型コロナウイルスの感染拡大から3年目となり、外食店に客足が戻りつつあります。一方、大手チェーンが相次ぎ店舗閉鎖を決定するなど、外食産業の苦境に終わりは見えません。どうすれば活気を取り戻せるのか、幅広い取材を通じて課題を解剖したのが、書籍『外食を救うのは誰か』です。
 日経ビジネスLIVEでは書籍発行に連動したウェビナーシリーズを開催します。第1回目は12月15日(木)19:00~20:00、「『安売りが外食苦境の根源だ』ファミレスをつくった男が激白」がテーマです。講師として登壇するのは1970年にファミリーレストラン「すかいらーく」1号店を開業した横川竟氏と、外食経営雑誌『フードビズ』の神山泉主幹です。書籍を執筆した記者の鷲尾龍一がモデレーターとなり、視聴者の皆様からの質問もお受けします。ぜひ、議論にご参加ください。

■日程:12月15日(木)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「安売りが外食苦境の根源だ」ファミレスをつくった男が激白
■講師:横川竟氏(すかいらーく創業者、高倉町珈琲会長)、神山泉氏(外食経営雑誌『フードビズ』主幹)
■モデレーター:鷲尾龍一(日経ビジネス記者)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。有料会員以外は3300円(税込み)となります。
※第2回は詳細が決まり次第ご案内します。

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