ライダーへの対価は「あえて固定給」

 1回の配送料は300円(税込み)だ。注文の額で変化はない。フードデリバリーなどのドライバーは配送の回数や距離などで稼ぎが変動する仕組みだが、OniGOのライダーはアルバイト採用で、時給1500円の固定給である点も特徴的だ。

7分以内のエリアに電動自転車で配送。ライダーは時給1500円の固定給であるのもOniGOの特徴だ
7分以内のエリアに電動自転車で配送。ライダーは時給1500円の固定給であるのもOniGOの特徴だ

 「フードデリバリーのドライバーの平均的な稼ぎを参考にした。当社の場合は配達が少なくても時給は変わらないが、オーダーを競争で取りにいく必要もない」(梅下CEO)

 1秒を争って少しでも多く稼ぎたい人もいれば、そうでない人もいる。そこに目をつけた。OniGOでは1時間に1人のライダーが運べる回数は3~4回程度とみている。受け取る配送料が300円で1時間に3回配達するとして、ライダーの時給が1500円となると単純計算で赤字になる。だが、そこは「配送が事業ではなく、モノを売るのが中心。ほかのスーパーと同じで(商品販売の)粗利でカバーする」(梅下CEO)という。商品の価格帯はスーパーと同程度とし、コンビニをやや下回る水準で、平均の購買単価は3000~4000円程度を想定する。

一般的なスーパーに比べると品数は限られるが、野菜や果物などの生鮮食品も取り扱う
一般的なスーパーに比べると品数は限られるが、野菜や果物などの生鮮食品も取り扱う

 品数は現状1000アイテム程度。将来的には酒類などの取り扱い免許を得て増やし、1300~1500アイテムに拡大したいという。一般的なスーパーでは1万~2万アイテムを置くとされるため、OniGOは10分の1程度とかなり少ない印象だ。「品ぞろえだけの追求はしない。コンビニやドラッグストアなどの売れ筋を中心に置き、絞り込むことで廃棄ロスを減らしつつ、学習しながらアイテム数を拡充していきたい」と梅下CEOは戦略を語る。

 OniGOは設立が今年6月と、生まれたばかりのスタートアップだ。銀行出身でスタートアップ経験を持つ梅下CEOが、開発やシステムのエキスパートなどの共同創業者5人とともに設立した。「1年で100店舗の出店を目指す」と意欲的な目標を掲げ、目黒区鷹番の1号店を中心に近隣エリアへと拡大していく構えだ。

成否を分ける4つのポイント

 OniGOのようなダークストアは日本で受け入れられるのか。成否のポイントは大きく4つありそうだ。

 1つは10分でお届けという点にどれだけの利用者が魅力を感じるかだ。10分でどうしても欲しいモノは限られるからだ。ただ、コンビニに行くのも面倒だという人や、外出のための準備を煩わしく感じるタイプには受け入れられやすいかもしれない。子育てで手が離せない主婦や、受け取りに指定された時間までの数時間を待ちたくない人にもプラスだろう。

 1回300円という配送料をどう考えるかが2つ目のポイントだ。40代の筆者は抵抗を感じてついつい送料無料ライン(一定の金額以上を購入すると送料が無料になる施策)が設定されたサービスを使って多めに買ってしまいがち。だが、フードデリバリーを日常的に使う若年層は送料を払うことに抵抗が薄い人が少なくないという。主婦や若年層からすれば、外に出る手間がなく10分で持ってきてくれるなら300円は高くないと感じるかもしれない。

 3つ目はエリアの狭さだ。半径1.5kmのエリアで出店し、その店ごとに人材を採用して、顧客を継続してつかまなければならない。顧客獲得や維持のコストと、スタッフの採用コストなどがそれぞれにかかる点は課題といえる。目黒区鷹番の1号店は元自動車販売店を居抜きで借りて出店コストを抑えたが、必ずしも良い物件があるとも限らない。また商品の在庫を抱えるため、売れなければ廃棄ロス問題が発生するリスクもある。店舗が増えると、それぞれの店への商品供給も課題になる。誕生したばかりのOniGOは、エンジェル投資家の出資が中心という。出店攻勢をかけるには資金力の問題も出てくるだろう。

 最後にして最大の壁は、競合との住みわけができるかだ。既存のスーパーはIT企業とタッグを組んでネットスーパーのサービス拡充を図る。日本経済新聞には8月23日、セブンイレブンが2025年までに全国2万店で宅配事業に参入し、最短30分の配送を実現すると報じた。既に店舗や商品流通のインフラを持つスーパーやコンビニの台頭に加え、米欧中のようにダークストア専業の店舗が新たに登場する可能性もある。

 いかに面を早く押さえるか――。競争が激化すれば、全国各地で陣取り合戦を繰り広げるフードデリバリー業界と同じように、消耗戦に突入する可能性もある。

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