東京都目黒区に異色のスーパーマーケットが誕生する。東急東横線の学芸大学駅から徒歩9分、目黒通り沿いの鷹番という場所に、新業態のスーパー「OniGO(オニゴー)」が8月25日に正式オープンする。洗剤やオムツなどの日用品から生鮮食品、冷凍・冷蔵食品まで、ずらりと棚に並ぶ商品はおよそ1000種。だが、この店に「客」は訪れない。十人弱のスタッフが自らの出番を待ち構えて控えているが、それはネットからの注文に備えてのものだ。

注文から10分配送のダークストアを開業するOniGOの(左から)梅下直也CEO、共同創業者の山本敬明氏と石川拓史氏(写真はすべて的野弘路)
注文から10分配送のダークストアを開業するOniGOの(左から)梅下直也CEO、共同創業者の山本敬明氏と石川拓史氏(写真はすべて的野弘路)

 「ダークストア」という言葉をご存じだろうか。欧州や米国、中国では既に急速に広まりつつある業態で、海外では主に即配のネットスーパーを指す。持つのはネット販売専用の物流センターのみで、客が来店するようなリアルな店舗は持たない。「日本でダークストア(即配ネットスーパー)専業はOniGOが初めてではないか」と運営会社OniGOの梅下直也CEO(最高経営責任者)は胸を張る。店内での飲食機能を持たず、デリバリーやピックアップ専用に特化する「ゴーストキッチン」のように、ダークストアは新たな小売りのカタチといえる。オープン前のOniGOを取材し、ダークストアのビジネスモデルと今後の戦略を聞いた。

注文からわずか10分でお届け

 収まる気配を見せない新型コロナウイルスの感染拡大によって、スーパー各社が商品を自宅に届ける「ネットスーパー」の利用は拡大しつつある。だが、こうした店は実店舗の運営業務にも人を割かなければならない。「最短で当日」の配送をうたいながらも、注文すると配送日時が翌日以降になる場合も少なくない。

 そのうえ、時間を指定できても「午前中」や「14時~16時」などと幅がある。1人が複数の顧客に配達するため時間にどうしても幅ができてしまうのだ。利用者はその間ずっと待機しなければならない。こうした潜在的な不満を解消すべく立ち上げたOniGOは「注文からお届けまで10分」という早さを前面に打ち出す。

店内に掲示された地図には、エリアごとに自転車で何分かかるか細かく記載されている
店内に掲示された地図には、エリアごとに自転車で何分かかるか細かく記載されている

 商圏は拠点となるダークストアを中心に半径1~1.5km以内に絞る。専用のアプリから注文が入れば、倉庫に待機するピッカーと呼ばれる担当者が棚から該当の商品を探し出し、配送担当の「ライダー」に引き渡す。ライダーはピッカーが商品を探している間に行き先の確認や自転車の準備などをして、すぐに出発できる体制を整える。配送は専用の電動自転車で7分以内のエリアと決めている。それが半径1~1.5kmなのだという。

ピッカーの端末には注文された商品の画像が表示され、探し出す時間を短縮、取り違いを抑止する。リング状のスキャナーでバーコードを読み取り、注文商品がそろえばライダーに渡す
ピッカーの端末には注文された商品の画像が表示され、探し出す時間を短縮、取り違いを抑止する。リング状のスキャナーでバーコードを読み取り、注文商品がそろえばライダーに渡す

 10分で配送するためには、ピッキングの時間も短くする必要がある。その時間は1~3分。効率的に間違いなく探し出せるよう、ピッカーの端末に商品画像を表示する工夫を施している。指輪のようなスキャナーで商品バーコードを読み取り、注文商品がそろった段階でライダーに渡す。

 店舗の開店時間は朝の10時から夜の10時まで。ピッカーは1~2人、ライダーは最大5人程度が待機し、注文に備える。まだ正式な開店前のテスト環境のため注文は集中していないが、利用が増えれば「10分お届け」が守れなくなる可能性もある。「今後の注文状況に応じてライダーの体制を整えていきたい」とOniGOの山本敬明・共同創業者は語る。

続きを読む 2/2 ライダーへの対価は「あえて固定給」

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