楽天グループを巡る「監視」が強まっている。共同通信は20日、楽天が中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)子会社から出資を受けた点について、日米両政府が共同で監視していく方針を固めたと報じた。この一報を受け、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落した。

 通信事業を営み、莫大な個人情報を持つ楽天に対してテンセント子会社が出資する問題点について、日経ビジネスはこれまでに細川昌彦・明星大学経営学部教授のコラムの記事「政府も身構える『テンセント・リスク』 楽天への出資案が飛び火」や本連載の記事「テンセント出資で『三木谷氏に個人情報守る責任』 自民・甘利氏」などでたびたび指摘してきた。

日米両政府が楽天を監視していく方針を固めたと報じられ、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落した(写真:SOPA Images / Getty Images)
日米両政府が楽天を監視していく方針を固めたと報じられ、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落した(写真:SOPA Images / Getty Images)

 日本政府はこうした問題提起に対して、きちんと対応する姿勢を見せるべく、共同監視の方針を打ち出したのだろう。ただ、監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキームだという。

 米国では対米外国投資委員会(CFIUS)に、米国企業の買収や株式取得が安全保障に与える影響を調査する権限が与えられている。だが、日本政府がそれをチェックする手段を持っていない点はこれまでにも書いてきた通りだ。企業が必ず真実を語る性善説のうえに成り立つもので、プレッシャーにはなるものの、本質的な監視になるのか疑問符がつく。

 楽天には、もう1つの監視が強まりつつある。

 それが、財務の健全性への監視だ。

 総務省は14日、高速・大容量通信規格「5G」向けの追加電波を、楽天モバイルに割り当てると発表した。東名阪エリアを除く全国において1.7GHz帯の基地局を開設できるようになる。地方での通信エリア拡大が期待でき、大手3社に比べて脆弱な楽天の通信環境の改善が見込まれる。

低下著しい自己資本比率

 楽天にとっては悲願の割り当てだ。ただ、認可にあたっては12の条件が課せられている。その1つに「設備投資及び安定的なサービス提供のために必要となる資金の確保、その他財務の健全性の確保に努めること」がある。

 認可の条件に財務の健全性の確保が明記されているのだ。これは2018年4月に楽天モバイルの参入を認めた際にもついた条件である。モバイル通信はライフラインの1つとなった。インフラ事業を営むにあたり、資金難となって突然サービスを停止されては困るからだ。

 財務の健全性を示す指標の1つに自己資本比率がある。楽天の自己資本比率は20年末時点で4.86%だった。金融事業を抱えるため低くなるのは仕方がない部分もあるが、16年末の14.82%や19年末の8.03%と比べると、低下が著しい。楽天はモバイル事業への投資がかさみ、前期に1000億円超の最終赤字となった。今期もモバイル事業での投資を継続し、赤字の公算が大きい。

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