NTTとKDDIが光通信網の世界的な標準化に向けタッグを組んだ。ライバル2社が組む背景には、高速通信規格「5G」の普及の遅れへの焦りがある。次世代通信規格「6G」時代で存在感を示すには技術だけでなく国際標準を作るためのしたたかさが必要だ。

 「NTTとKDDIは、強靭(きょうじん)な通信インフラであるオールフォトニクス・ネットワーク(光通信網)を早期に社会実装し、世界へ貢献する」――。3月17日、両社は光を使う新技術である光通信網のグローバル標準化について、基本合意をしたと発表した。

 「スマートフォンの充電は1年に1回でもいい。そんな世界もあながちできない話じゃない」。NTTの川添雄彦副社長は光技術を使った未来についてこう語る。NTTは光を活用することで遅延を極限まで減らしたり、消費電力を従来の100分の1に減らしたりできる通信基盤「IOWN(アイオン)」技術の提案で、先陣を切る。

 一方、KDDIは国際通信のための大容量光海底ケーブルシステムに強みを持つ。双方の強みを生かし、2030年にも突入するとみられる「6G」時代に日本勢で足並みをそろえ、国際標準で主導権を握りたい考えだ。

 具体的には双方の光ファイバーやそれに関連する通信技術、国内外での社会実装などのノウハウを持ち寄り、キャリア間の相互接続もできるよう伝送方式の標準化を目指す。IOWNのコンソーシアムにはこれまで100社超が名を連ねており、KDDIは2月に117番目の加入となった。

 「両社が組むことはないと思っていたから、驚いた」。大手ベンダーのある幹部は、驚きを隠さない。KDDIはこれまで「政治でも何でも対抗軸は必要」(髙橋誠社長)と自社の存在意義を示してきた。それでもNTTと組むのは、5Gの普及で他国の後じんを拝している日の丸通信勢の焦りの表れにも見える。

「対抗軸は必要」と話してきたKDDIの髙橋社長(写真:的野 弘路)
「対抗軸は必要」と話してきたKDDIの髙橋社長(写真:的野 弘路)

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