リクルートホールディングスは13日、副社長執行役員兼COO(最高執行責任者)の出木場久征(いでこば・ひさゆき)氏を4月1日付で社長兼CEO(最高経営責任者)に昇格する人事を発表した。現社長兼CEOの峰岸真澄氏は会長兼取締役会議長となる。

4月から新社長に就く出木場久征氏

 45歳の出木場氏は、今やリクルートで最も成長力の高い事業となった「インディード」を自ら“発掘”して育て上げた張本人だ。峰岸氏が掲げたグローバル化の目標。その達成に向けて出木場氏は指名を受け、M&A(合併・買収)や協業できる相手を世界で模索した。数多くの企業を見た中で出木場氏が見つけたのが米インディードだった。

 2000年代には紙媒体が中心だったリクルートのデジタルシフトをけん引した。特に注力したのは、旅行情報誌「じゃらん」のサイトの活性化と、美容情報誌「ホットペッパービューティー」のオンライン予約サービスの導入だ。当時は「パソコンを使う美容室はない」と周囲から反対されたが、「5年後、10年後には必ずオンライン予約に切り替わる」として押し切った。ホットペッパービューティーはデジタルシフトを先取りし、美容室などを中心に、今も高い成長が続いている。

 2000年代には紙からデジタルへ、そして2010年代にはグローバルへとリクルートを成長させた立役者だ。峰岸社長はトップとしてリクルートの上場やグローバル化を決断し、手足となって動いたのが出木場氏とも言える。

 出木場氏はインディードの取締役も務めており、同社の本社がある米国テキサス州のオースティンに駐在している。社長就任で日本に帰国するかと思いきや、リクルートによると、4月以降も米国に留まるという。海外売上高比率が4割を超えるまでになったリクルートだが、持ち株会社のトップが海外在住というのはリクルートでも初めてのことだ。

 HOYAの鈴木洋CEOがシンガポール在住など、これまで例がなかったわけではない。だが、日本企業のトップが海外に「駐在」して指揮を執るのは珍しい。リクルートとしては、これまでも取締役会などにはオンラインで参加しており、日本には会長の峰岸氏がいる点もあって、社長が米国在住でも支障はないと判断している。

 出木場氏が発掘して買収したインディードは今や「人材界のグーグル」と呼ばれ、世界で60を超える国と地域でサービスを展開し、月間の訪問者数(ユニークビジター)は2.5億人に上る。

 リクルートの時価総額は、2014年の上場当初は約2兆円だったが、インディードの成長期待の高さから投資家の買いが集まり、20年11月には8.3兆円を超えるまで上昇した。足元では約7.6兆円とやや落ち着いているものの、東証の上場企業では第一三共に次ぐ12位と日本を代表する企業に成長した。

 「日本では大企業だが、世界ではまだまだ中小企業」――。13日のオンライン会見で出木場氏は、世界の視点で自社を俯瞰(ふかん)して語った。

 米グーグルや米アップル、米アマゾン・ドット・コムなどのGAFAに比べると、事業の規模や収益力で大きな差がある。米国で長く過ごす出木場氏はだからこそ、その力の差を痛感しているだろう。

 さらなるグローバル化と成長を目指す。出木場氏が米国に留まりながら社長に就任する背景には、リクルートがもう一段高いステージへの成長を目指す覚悟が見える。

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